「スナッチを取り入れようと思うのですがどうやったらいいのかわからない」「スナッチで瞬発力が身に付くんですか?」「スナッチで筋肥大は期待できますか?」
スナッチに関する疑問は様々です。
この記事ではスナッチの基本情報や3つの効果、動作、さらに効果的なトレーニングのための7つのポイントを紹介しています。
ぜひ、参考にしてみてください。
1.スナッチとは
スナッチは簡単にいうと、床に置いているバーベルなどを一気に頭上まで持ち上げる種目です。
スナッチでは1度に全身の筋肉を使うことができます。
また、スナッチはウエイトリフティングの種目のうちのひとつで、他のスポーツ選手のトレーニングに使われることがある種目です。
スナッチは主に瞬発力の向上を狙って行われることが多い種目です。
1ー1.スナッチはクイックリフト種目である
スナッチはクイックリフトと呼ばれる種類の種目で、素早く持ち上げることが求められる種目です。スナッチはバーベルなどを素早く持ち上げるために身体の隅々の筋肉を使うので全身の筋肉に刺激を入れるには最適の種目です。
また、スナッチをやり込むことで全身の筋肉の力を素早く出すことができるようになるので、スポーツ動作におけるダッシュやジャンプといった動作がより力強く行えるようになります。
通常のスクワットやデッドリフトでも同様の効果は期待できますが、力を素早く出すという点ではスナッチのほうに分があります。
ちなみに、スナッチと同じクイックリフト種目にクリーンという種目があります。スナッチよりもクリーンのほうが高重量を扱うことができますが、クリーンは手首の柔らかさが求められるので、クイックリフトの導入はスナッチから始めてみましょう。
1ー2.スナッチは筋肥大には向かない
スナッチは筋肉量を増やすことには向いていません。スナッチでは筋肉量を増やすために必要な、時間をかけて行うことや回数を重ねること、特定の筋肉に集中して負荷を与えるということができないからです。
筋肉量を増やしたい人はスナッチはやらずにスクワットやデッドリフトなどをやり込みましょう。
1ー3.スクワットやデッドリフトの強化ができる
スナッチを行うことで、スクワットやデッドリフトの強化ができます。
スナッチを行うことで力の発揮のスピードが速くなり、スクワットやデッドリフトのボトムポジションでの動作がラクになるからです。
特に、デッドリフトでファーストプルのところで上手く引くことができない人はスナッチを行うことをおすすめします。
2.スナッチのバリエーション
スナッチには様々なバリエーションがあります。
主に、ツールでのバリエーションと可動域でのバリエーションです。それぞれのバリエーションの特徴について書きます。
2ー1.高重量が扱うことができるバーベルスナッチ
バーベルでのスナッチは、スナッチの中では高重量を扱うことができます。また、バーベルで行う場合は重量設定が細かくできることが特徴と言えます。なので、正しい力を知るにはスナッチであればバーベルが最適です。最初のうちはバーだけでバーベルのスナッチから始めてみましょう。
ただ、バーベルでのスナッチは恐怖感が伴います。バランスを崩してしまうと、最悪バーベルの下敷きになってしまう恐れがあります。そうならないために、スナッチでは粘ってしまいそうになったら手を放してバーベルの前か後ろにエスケープしましょう。
全身の連動性を高めることができるパワースナッチ
パワースナッチを継続的に行うことで、全身の連動性を高めることができます。
バーベルのスナッチの中で、床から引いて行うスナッチのことをパワースナッチといいます。
パワースナッチは低いところから動作を始めるので、後に出てくるハングスナッチよりも多くの筋肉の力の連動性が求められます。
一般的にスナッチといえばバーベルで行うパワースナッチのことを指します。最初はバーのみで動作を確認してみましょう。
股関節を爆発的に使えるようになるハングスナッチ
ハングスナッチでは股関節を爆発的に使うことができるようになることが特徴です。ハングスナッチはハングポジションから始めるスナッチのことを言います。
ハングポジションとは、スナッチの手幅でバーベルを持って直立したポジションのことを言います。
ハングポジションから始めることで股関節の動きに集中しやすくなります。
股関節の動きに集中したいときは、ハングスナッチを選択しましょう。
肩まわりを鍛えることができるマッスルスナッチ
マッスルスナッチでは、例外的に肩まわりを鍛えることができます。
マッスルスナッチは途中までは同じですが、ラックポジションに入るときに膝を使わずに腕の力でバーを持ち上げる点で異なります。
ジャンプポジションで肘を高く上げたまま、肘を支点にしてこぶしが上になるように前腕の向きを変えて、ミリタリープレスのようにバーを上に押し出して、ラックポジションの状態まで持っていきます。
このようにすることで、肩まわりを鍛えることができます。
ただし、筋肉量を増やすために肩を鍛えるのであれば、普通にミリタリープレスなどを行ったほうが効果的です。
2ー2.左右差がモロにわかるダンベルスナッチ
ダンベルを2つ持って行うダンベルスナッチでは筋力の左右差がモロにわかります。なぜなら、ダンベルはバーベルとは違い、ひとつずつ独立しているからです。
左右均等に鍛えたい人はダンベルスナッチを行ってみましょう。
ただし、ダンベルスナッチは難しい種目です。ダンベルスナッチを行うときは軽い重量から始めましょう。
片方ずつに集中しやすいワンハンドダンベルスナッチ
ダンベルひとつで行うワンハンドダンベルスナッチは、動作に集中しやすいことが特徴です。扱うダンベルがひとつなので、ダンベルスナッチよりも動作がはるかに簡単です。
また、ダンベルから手を放すだけで緊急回避できるので、安全性も高いことも特徴です。
デメリットは片手ずつ行うので時間がかかることです。トレーニング時間を長く確保している人ならいいかもしれません。
2ー3.全身の連動性を理解しやすいケトルベルスナッチ
ケトルベルでのスナッチは全身の連動性が理解しやすいことが特徴です。
全身の連動性が高いときはケトルベルが軽く感じ、うまくいってないときはケトルベルが重く感じるのでとてもわかりやすいという点でおすすめです。
また、ケトルベルスナッチは、スナッチの中では例外的に回数を重ねることができます。回数を重ねることで重心の取り方などを学ぶことができます。これはバーベルやダンベルではできません。
ケトルベルでのスナッチのデメリットはケトルベルを置いている施設がなかなかないことです。
ケトルベルでのスナッチはワンハンドダンベルスナッチ同様、安全性が高いので購入することを検討してもいいでしょう。
3.バーベルスナッチの基本的な動作
ここでは一般的なバーベルスナッチの基本動作について解説します。
3ー1.ハングポジションでの3つのポイント
ハングポジションとは、スナッチ特有のグリップ幅でバーベルを持ち、横から見て肩、バー、股関節、膝、足の真ん中が一直線上にある状態のことを言います。
ここでは床にバーベルを置いた状態からのことについて書きます。
もっともジャンプしやすい位置に足を置く
スナッチを行う前に最初に設定すべきポイントはどこに足を置くかです。もっともジャンプがしやすい足幅、つま先の向きをあらかじめ把握しておきましょう。目安は肩幅程度ですが、自分に合った位置を見つけておきましょう。
腕を伸ばした状態でバーが恥骨と上前腸骨棘の間に来るような幅でバーを上から握る
スナッチを行うときのグリップ幅は、腕を伸ばした状態でバーが恥骨と、上前腸骨棘の間に来るような幅にしましょう。そうすることで、自分の腕の長さや胴の長さを考慮した理想的な幅でスナッチを行うことができます。
ちなみに、上前腸骨棘とは骨盤の前側のでっぱりのことです。この部位は骨盤のゆがみを見るのに使われることが多い部位です。
また、グリップを広げることで、バーベルの移動距離が短くなるが肩や手首に負担が来やすくなることや、グリップを狭めることで肩や手首の不安が減るがバーベルの移動距離が増し左右のバランスをとることが難しくなることを踏まえてグリップ幅を微調整すると、さらに自分に合ったグリップ幅が見つかるでしょう。
デッドリフトの要領で立ち上がる
上の2つのポイントを踏まえてから、デッドリフトの要領でハングポジションに来るまでバーベルを持ち上げましょう。
ここでのポイントはスナッチ特有のグリップ幅の影響で上体の前傾角度が変わることです。グリップ幅が大きくなったことで上体の前傾が大きくないとバーベルを掴むことはできません。
上体の前傾角度が大きくなっても腰を曲げないようにしましょう。
3ー2.ジャンプポジションでの4つのポイント
ジャンプポジションとは、ハングポジションから腰を後ろに引いて股関節と膝を少し曲げて上体のことを言います。そこから、ラックポジションまでのポイントを解説します。
ジャンプをする直前のように股関節と膝を曲げる
スナッチのジャンプポジションでは、垂直跳びや立ち幅跳びと同じように、ジャンプをする直前のように股関節と膝を曲げるようにしましょう。このときに、股関節と膝が伸び切ってしまっていると爆発的にバーベルを持ち上げることができなくなってしまうので注意が必要です。
また、股関節と膝を曲げすぎると、股関節と膝の伸展のタイミングがズレてしまい大きな力が生まれません。ちょうどいい場所を自分で見つけましょう。
脇の下に力を入れてバーを固定する
バーを持ち上げる直前には、脇の下に力を入れてバーを固定するようにしましょう。そうすることで、胸を張った状態をキープすることができバーベルと身体の距離を近くすることができます。また、
脇の下の広背筋が収縮することで肩の位置が整いオーバーヘッドの動作がしやすくなります。
下腹部にバーが触れたらすぐにジャンプをする
広背筋に力を入れてから、ジャンプポジションからバーを持ち上げていき下腹部にバーが触れたらすぐに上に向かってジャンプをしましょう。このとき、足首と膝と股関節を同時に伸展させると大きな力が生まれます。そのタイミングを軽い重量のときに掴んでおきましょう。
ジャンプの後に肘を曲げる
スナッチではバーを引き上げる動作が必要です。肘を曲げてバーを引き上げるタイミングはジャンプの後が理想的です。もし、ジャンプの前に肘を曲げてしまうと、力の伝達がうまくいかなくなってしまいます。それだけでなく肘が曲がっている状態でバーベルを持つと上腕二頭筋に力が入ってしまい腕の回転が遅くなってしまいます。
肘を曲げるタイミングはジャンプの後です。これを頭に入れておきましょう。
3ー3.ラックポジションでの3つのポイント
スナッチでのラックポジションとは、スナッチグリップでバーベルを持ち、両肘を伸ばした状態で立っているポジションのことをいいます。スナッチの動作のゴールとなるポジションについて解説します。
肩の真上にバーが来るようにする
スナッチでのラックポジションでは、肩の真上にバーが来るようにしましょう。肩の真上にバーが来るようにすることで、肩のストレスを最小限にとどめておくことができます。このとき、胸を張った状態にしておくと肩への負荷が広背筋に移り、姿勢をとるのがラクになります。
膝を柔らかく使う
スナッチのラックポジションに入る直前のタイミングで膝を柔らかく使うようにしましょう。一度伸ばし切った股関節や膝を再度曲げることで、ラックポジションにバーベルが来たときの衝撃を和らげることができます。このテクニックのことをディップと呼んだりします。
ラックポジションにバーベルが来たときの衝撃を膝で緩和させないままだと肩に大きなストレスがかかってしまいます。怪我の予防という観点からラックポジションでは膝を柔らかく使うようにしましょう。
横から見てバーと肩、股関節、膝、足の真ん中が一直線になるように立つ
スナッチのラックポジションは最終的には横から見てバーと肩、股関節、膝、足の真ん中が一直線になるように立ちましょう。なぜなら、その状態がもっとも安定する形だからです。安定した形をつくることができれば、安全に終わることができます。
3ー4.一般的な施設でのバーベルの下ろしかた
スナッチはバーベルの下ろしかたに気を配る必要がある種目です。
クロスフィットのボックスやウェイトリフティング部のプラットフォームでもない限り、バーベルを振り下ろすことができる環境ではないことが多いのが現状です。
ここでは、一般的な施設でのバーベルの下ろしかたについて解説します。
手順は以下のとおりです。
- 膝を曲げつつバーを胸の上にゆっくり下ろす
- 股関節を引きつつバーを太ももの上にゆっくり乗せる
- 股関節と膝を使って床にバーベルをゆっくり下ろす
この手順に沿ってバーベルを下ろすことで安全に終わらせることができます。
4.スナッチの3つの効果
スナッチではおもに3つの効果が期待できます。
4ー1.力を素早く発揮することができる
スナッチをやり込むことで、力を素早く発揮することができるようになります。
スナッチは力を一瞬のうちに発揮しないと全くできない種目です。なので、スナッチができるようになることで力を素早く発揮することができるようになります。
力を素早く発揮できるようになると、スタートやジャンプの質が上がりスポーツのパフォーマンスが良くなります。
スナッチはアスリートには必須の種目です。
4ー2.胴体を固定する力が強くなる
スナッチを継続的に行うことで、胴体を固定する力が強くなります。
スナッチをするためには胴体を固定する力が必要であり、スナッチを継続的に行うことで胴体の固定力は強くなるからです。
もし、胴体の固定力が強くないと、床を蹴った力をバーベルに伝えることができずバーベルを挙げることができなくなります。
胴体の固定する力が強くなることでスクワットやデッドリフトといった種目にも応用が利きます。
特にスクワットの切り返しやデッドリフトのボトムポジションの強化につながります。
4ー3.股関節を爆発的に使うことができる
スナッチは股関節を爆発的に使う種目です。
スナッチをやり込むことで股関節の力を素早く強く発揮することが可能になります。
股関節の力を有効に使うことができるようになるので、力強いダッシュや高いジャンプが可能になり、スポーツのパフォーマンスが良くなります。
5.スナッチをさらに効果的に行うための7つのポイント
スナッチをさらに効果的に行うためのポイントを紹介します。
5ー1.シューズをリフティングシューズにする
効果的なスナッチを行うためにシューズにこだわるといいでしょう。
理想的なのはリフティングシューズです。底が浅くて固く、踵の部分が高くなっているリフティングシューズを履いてスナッチを行うことでより質の高いトレーニングができるようになります。
反対に、スナッチに向かないのがバスケットシューズやランニングシューズです。この2つはクッション性が高いのでウエイトトレーニングを行うには不向きなシューズです。
5ー2.ベルトをするのであれば厚みが薄いものにする
スナッチを行う際、ベルトをするというのはとてもいいアイデアです。
薄いマジックテープのベルトが理想ですが、ベルトのバックルが前に出過ぎているものでなければ問題はありません。ベルトをした状態でのスナッチで怖いのがベルトとバーが接触してしまうことです。
ベルトとバーが接触しないようなベルトを選択しましょう。
5ー3.動画を見る
スナッチのようなクイックリフト種目は動作のイメージをつくるのが難しいので、普段から動画を見て頭の中でイメージをつくるといいでしょう。
JATI認定トレーニング指導者オフィシャルテキストにも、初心者に対するクイックリフトの段階的練習法・指導法の項で視聴覚による基礎学習を第一に挙げています。
今はSNSなどで動画を簡単に見ることができる時代なので、スナッチの動画をたくさん見てイメージをつくりあげましょう。
5ー4.細かい動きから徐々に作っていく
スナッチのようなクイックリフトの種目は細かい動きから徐々に作っていくという段階的な練習を行うことがあります。
スナッチの場合、スナッチグリップデッドリフトから、ジャンプポジションからバーベルを引き挙げるスナッチプル、両肘を伸ばして行うオーバーヘッドスクワットというように3種目に分けて行います。(分習法)
そこから、スナッチの全体の動作の質を上げていく(全習法)練習に移行していくのがスナッチを含むクイックリフトの一般的な練習法です。
5ー5.専門家に見てもらう
スナッチはとても難しいトレーニング種目です。
クイックリフトの専門家に見てもらいながら練習を行うことで自分では気づかなかったポイントを教えてもらえる可能性があります。
もし、専門家がトレーニング施設にいなくてもいいように動画を撮るのもいいかもしれません。
5ー6.回数は1回か2回にする
スナッチを行うとき、慣れないうちは1セットにつき1回か2回にしておきましょう。
スナッチは動作が難しいのでハイレップなセットを組むことで雑なスナッチを行う可能性が高まるからです。
マイク・リプトーは著書のStartingStrengthの中で「パワースナッチは1セットにつき1回か2回がベストだ」と主張しています。
5ー7.無理な重量で行わない
スナッチを行う際は、絶対に無理な重量で行わないようにしましょう。
スナッチはバーベルなどを頭上に持ち上げる種目です。頭部への衝撃は最悪のケースを招きかねません。そうならないためにも無理な重量では行わないようにしましょう。
まとめ
スナッチは自分のイメージを掴むまでが大変ですが、動画を見たり軽い重量でやってみて軽かった感覚を少しずつ再現できるようになったりすることで、恐怖感を取り除ける種目だと思います。
スナッチは身体のシルエットを変えたい人にとっては不要な種目ですが、一度試しにやってみると案外楽しめる種目なので、秋や冬のオフシーズンに試してみることをおすすめします。
スナッチに興味を持っていただけたらと思います。頑張ってみてください。応援しています。
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