逆三角形の体を作るためには、肩の発達が欠かせません。
しかし一概に肩のトレーニングといっても、いくつもの種類があります。
そこで今回は肩のトレーニングの中でも立ち位置が曖昧なミリタリープレスに関して説明していきます。
そもそもミリタリープレスとは?といった基本的な情報から行うメリットや注意点、そして正しいフォームまでを徹底的に解説していきます。
ミリタリープレスのことを正しく理解し、効率よくボディメイクを成功させましょう!
1.ミリタリープレスとは?ミリタリープレスの基本情報
トレーニングを行なっている人であれば、一度は『ミリタリープレス』という種目を聞いたことがあるのではないでしょうか。ミリタリープレスとは、その名の通り米兵がライフルを胸元から頭上へと上げ下げする訓練の様子から名付けられています。
しかしなんとなく肩を鍛える種目だとはわかっているけども、具体的な定義までを理解していない方がほとんどだと思います。
実際にミリタリープレスは人によって解釈によって違いますので、まずはミリタリープレスの基本的な情報から説明していきます。
1-1.ショルダープレスとミリタリープレスの違い
ミリタリープレスとショルダープレスは、両方とも肩の筋肉である三角筋を鍛える種目です。
ではその違いは何なのでしょうか。
ミリタリープレスとショルダープレスの違いとしては、フォーム動作を挙げることができます。
ショルダープレスとは、重りを頭上に持ち上げていくトレーニングです。
しかし一概にショルダープレスと言っても使用する器具によって「ダンベルショルダープレス「バーベルショルダープレス」「スミスマシンショルダープレス」と名前が変わり、そして重りを下ろす位置によって「フロントショルダープレス」「バックプレス」ともなり、さらに座って行うもの、立って行うものなどそのやり方は多岐に渡ります。
しかしミリタリープレスとは基本的に“バーベルを使用”してなおかつ“スタンディングで行う”トレーニングのことを指します。
つまりミリタリープレスとは、ショルダープレスという大枠の中のある特定のフォームで行うトレーニングです。
2.ミリタリープレスで得られる3つのメリット
ミリタリープレスを行う上で得られる3つのメリットを紹介していきます。
2-1.三角筋だけではなく全身を鍛えられる
ミリタリープレスは通常のフロントバーベルプレス同様に三角筋(主に前部と中部)も鍛えられますが、同時に僧帽筋や広背筋、そして体幹部の強化にも繋がります。なぜならスタンディングで行うため座位より腹圧をかける必要があり、全身性の運動だからです。
そのため腹横筋などのインナーマッスルや脊柱起立筋なども鍛えることができ、他のトレーニング種目におけるパフォーマンスアップ効果も期待できます。
2-2.連動性により体の使い方が上手になる
ミリタリープレスを行うことで体の使い方が上手になります。
座った状態で行うフロントショルダープレスは、基本的に下半身は使わないため上半身のみの運動となります。
しかし、ミリタリープレスはスタンディングで行うために上半身だけではなく下半身の動きも重要になってきます。膝や大臀筋の使い方、そして上半身への連動性が必要になります。これは特にパワーリフティングなどの競技で必要な動きですが、体の使い方が向上すれば通常のボディメイクを行う上でも役立ちます。
例えば、連動性が上手に行えるとチーティングがスムーズに行えるようになります。
チーティングが上手くなると、サイドレイズやフロントレイズでより高重量を用いて対象部位へと効かせることが可能となります。
2-3.通常のショルダープレスよりも可動域が広くなる
ミリタリープレスは、通常のショルダープレスよりも可動域を広く出すことができます。
バーベルを利用したフロントショルダープレスを例に考えてみると、スタートポジションからフィニッシュポジションまでバーベルは常に体に対して前面にあります。
しかし、ミリタリープレスではスタンディングで行うためにフィニッシュポジションでバーベルを頭上まで持ち上げることが可能となります。
イメージとしては、ウェイトリフティングで行われるクリーン&ジャークのフィニッシュポジションと同様です。
つまり三角筋に対してより強い収縮感を与えることができるということです。
3.ミリタリープレスを行う上での注意点
ミリタリープレスは、通常のショルダープレスでは得られないメリットを得ることができると説明してきました。しかし、反対にデメリットなどの注意点も存在します。
ミリタリープレスを行う上で注意すべき点を2つあげていきます。
3-1.怪我のリスクが高まる
ミリタリープレスはスタンディングで行うため、しっかりと体幹部を固めていないと怪我をするリスクが高まってしまいます。
特に動作中に極端に反り腰になってしまうと腰痛を発症する危険性があります。
また全身を連動するため肩や膝など関節の柔軟性が低かったり、骨格のズレなどが生じている場合は避けたほうがいい種目です。
フォームも座った状態で行う通常のショルダープレスのほうが簡単なため、無理して行わないようにしましょう。
3-2.フロントショルダープレスよりも扱える重量が下がる
ミリタリープレスは立った状態で行うために、どうしても扱える重量が下がってしまいます。
座った状態で行うフロントショルダープレスではベンチの背もたれに上体を預けられるため、身体を固定しやすくなります。結果として、比較的高重量を扱いやすいというメリットがあります。高重量を扱えるということは、ボディメイク的な観点から見ても効果的です。
そのため、特に初心者の頃はミリタリープレスをあえて行う理由はありません。
4.ミリタリープレスの正しいフォーム
ミリタリープレスを行う上でのメリット・デメリットを理解できたところで正しいフォームを解説していきます。先述したように、フォームは簡単ではないのでしっかりと練習しましょう。
まずはスタートポジションに入るまでの流れから説明していきます。
3-1.ミリタリープレスでスタートポジションに入るまで
- パワーラックの中に入り、胸の下あたりでセーフティーバーをセットする
- 胸の上部の高さにラックをセットする
- バーベルになるべく近づき、膝を軽く曲げる
- バーベルをオーバーハンドグリップで肩幅、もしくは肩幅より少し広く(肩幅の約1.2倍)握る
- バーベルが大胸筋上部に来る位置で保持し、ラックアップする
- ラックアップしたら2,3歩後ろに下がる
- 足を肩幅に開き、腹圧をしっかりとかけて上体を固める
※ここがスタートポジションになります。
スタートポジションに入るまでの詳しい内容を解説していきます。
パワーラックの中に入り、胸の下あたりでセーフティーバーをセットする
ミリタリープレスは、パワーラックの外でも行うことができます。ただし、慣れるまではなるべくパワーラックの中で行うことをオススメします。なぜなら、セーフティーバーをセットすることができるので万が一でも怪我のリスクを軽減できるからです。
セーフティーバーの目安は胸の下部、動作中に邪魔とならない位置でセットしましょう。
胸の上部の高さにラックをセットする
ラックアップが自然に行えるよう、ラックの位置は胸の上部を目安にセットしてください。
バーベルになるべく近づき、膝を軽く曲げる
バーベルからの距離が遠いと、ラックアップでの負荷も大きくなってしまいます。安全にラックアップを行うためにも、なるべくバーベルに近づいた状態でラックアップを行いましょう。
また膝の伸展運動に合わせることで、無駄な力を使わずにラックアップが行えます。
バーベルをオーバーハンドグリップで肩幅、もしくは肩幅より少し広く(肩幅の約1.2倍)握る
バーベルは順手のオーバーハンドグリップで握りましょう。また、なるべく親指も巻きつけるサムアラウンドグリップをオススメします。
サムレスグリップだとバーベルが滑って落下する危険性があるためです。
手幅は骨格によって変わってきますが、スタートポジションで地面と前腕が垂直になるポジションを目安に握るようにしてください。
バーベルが大胸筋上部に来る位置で保持し、ラックアップする
ラックアップ時は、バーベルを大胸筋上部に乗せるイメージで行いましょう。
ラックアップしたら2,3歩後ろに下がる
ラックアップしたその場で動作を行うと、ラックにバーベルがぶつかってしまいます。2,3歩下がり、周りに邪魔となるものがない位置で行いましょう。
足を肩幅に開き、腹圧をしっかりとかけて上体を固める
足の広さは肩幅に開き、膝は軽く曲げます。重心は足の裏の真ん中、ミッドフットを目安にしましょう。
また、動作に入る前に腹圧をしっかりとかけ、上体を固定するようにしてください。
3-2.ミリタリープレスの動作手順
続いて、実際に動作へと入っていきます。
まずは一連の流れを説明します。
- バーベルが体の前から離れないようにして頭上へと持ち上げていく
- バーベルが頭のちょうど真上に来るまで挙上し、肩の収縮を感じる
- ゆっくりと同じ軌道で戻していき、鎖骨のラインで止める
- 再度頭上まで持ち上げていく
- セットが終わったら、鎖骨の位置でバーベルを保持して2,3歩前に出てバーベルをラックに戻す
続いて、それぞれの動きに関して細かく解説していきます。
バーベルが体の前から離れないようにして頭上へと持ち上げていく
バーベルの軌道が体から離れてしまうと、バランスが取りづらくなってしまいます。常にバーベルが体から離れず、顔のすぐ近くを通るように意識しましょう。
バーベルが頭のちょうど真上に来るまで挙上し、肩の収縮を感じる
ミリタリープレスは座った状態で行うフロントプレスよりも可動域を広く出せます。フィニッシュポジションは、バーベルが体の前面ではなく頭上に来るまで挙上してください。
また、この時に三角筋が収縮していることを意識しましょう。
ゆっくりと同じ軌道で戻していき、鎖骨のラインで止める
フィニッシュポジションから下ろす際は、ゆっくりと三角筋へと負荷を感じながら下ろしていきます。下ろす位置は、鎖骨のラインです。また、この時に三角筋にストレッチがかかることを意識してください。
再度頭上まで持ち上げていく
切り返していく際は、なるべく反動を使わずに挙上しましょう。連動性を強化するためにあえて膝のクッションを利用する方法もありますが、これは通常のミリタリープレスをマスターしてから挑戦しましょう。
セットが終わったら、鎖骨の位置でバーベルを保持して2,3歩前に出てバーベルをラックに戻す
ミリタリープレスの最後のレップが終わったら鎖骨のラインでバーベルを保持したままゆっくりと前に出て、バーベルをラックに戻しましょう。最後まで気を抜かないようにしてください。
参考動画
5.ミリタリープレスをより効果的に行うためのコツと注意点
ミリタリープレスを行う上で、より効果的に効かせるためにコツと注意点をあげていきます。
5-1.挙上に合わせて頭の位置を動かす
ミリタリープレスでは、フィニッシュポジションで頭上までバーベルを挙上します。
その際に頭を前に出すようにすると三角筋の起始と停止がより近づき、収縮を強めることができます。
イメージとしてはバーベルが頭上を通るのに合わせて軽く下を向くようにして頭を前に出し、バーベルを下ろす際に元の位置に戻します。
まずは軽い重さで練習をしてみてください。
5-2.爆発的挙上、ゆっくりと下降
プレス系のトレーニングでは重りを下ろす際、つまりネガティブ時にゆっくりと下ろすことで筋肥大に効果的だと言われています。
これはミリタリープレスでも同じことが言えますが、さらに効果的に行うためには、挙上時のスピードも意識しましょう。
具体的には、爆発的に挙上することです。
一気にウェイトを持ち上げることで、多くのモーターユニット(1本の神経とそれを支配している筋繊維のこと)が動員されます。
モーターユニットが刺激されると神経系が発達し、最大筋力が向上するとの研究結果も見られています。1)
より効率よくトレーニングを行うためには、ネガティブ動作だけではなく挙上スピードも意識してみてください。
5-3.極端に腰を反らない
ミリタリープレスは連動性の向上や全身運動というメリットがありますが、一歩フォームを間違うと怪我をしてしまいます。特に気をつけなければならないのが、動作中に腰を反ってしまうことです。
バーベルを上げるときと下げるときは、重りに意識を持っていかれるため無意識で腰を反ってしまいがちです。
これはスクワットやデッドリフトなどのフリーウェイト系のトレーニングに共通する点ですので、腰を反らないよう意識してトレーニングを行ってください。
心配な場合はトレーニングベルトの着用も効果的です。
まとめ
今回はミリタリープレスに関して紹介してきました。
ミリタリープレスはいまいちどんな種目かわかりづらいですが、簡単に説明すると『スタンディングで行うフロントバーベルショルダープレス』です。
座った状態で行うショルダープレスに比べて鍛えられる部位が増え、連動性の強化にもつながります。
しかし、怪我のリスクが高く扱える重量も下がってしまうというデメリットもあります。
そのため、ボディメイクを行う上ではそこまで優先度の高い種目ではありません。
たまに行う場合は新しい刺激を入れられマンネリや停滞を打破することができます。
ただし、行う場合は怪我の十分気をつけた上で行いましょう。
参考文献
1)Effect of different pushing speeds on bench press.
Int J Sports Med. 2012 May;33(5):376-80. doi: 10.1055/s-0031-1299702. Epub 2012 Feb 8.
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