逆三角形の体を作るために欠かせない筋肉といえば、三角筋ですよね。しかし、三角筋の前部や中部は意識的に鍛えていても、後部まで気が回らないという方は多いのではないでしょうか。
三角筋後部が発達しているのといないとでは、後ろから見た際の背中の立体感がまったく異なるためしっかりと鍛える必要があります。ただ、実際三角筋後部は自分でも見えないのに加え、効かせるのも難しい部位ですよね。
そこで今回は、三角筋後部を効率よく鍛えるためのコツを紹介していきます。本稿を読み、綺麗に発達した三角筋後部を手に入れましょう!
1.三角筋後部の基礎情報
三角筋後部を効率よく鍛えるためには三角筋後部がどこに付着しており、どのような働きを担っているかを把握しておく必要があります。なぜなら、筋肉がどこからどこまで付着しているかを知っていることで、トレーニングの動作中に意識が変わってくるからです。
そのため、まずは三角筋後部の基本的な情報から見ていきましょう。
1-1.三角筋後部の起始・停止
三角筋後部がどこからどこまで付着しているかを説明していきます。三角筋後部の起始は肩甲骨の肩甲棘(けんこうきょく)で、停止は上腕骨です。肩甲棘とは肩甲骨の一部のため、肩甲骨から上腕骨まで付着しているとイメージしましょう。
そのため、この2点を近づければ三角筋後部の収縮が起こり、遠ざければストレッチの刺激を与えることができます。
1-2.三角筋後部の役割
続いて、三角筋後部の役割を説明していきます。
三角筋後部の主な役割は、
・肩関節の外旋動作(小さく前習えをした状態で、肘から先を外側に開く動き)
・肩関節の伸展動作(前方にあげた腕を戻す動き)
・肩関節の水平外転動作(水平にあげた腕を後ろに引く動作)
があげられます。
この中で三角筋後部のトレーニングの際にもっとも使用されているのが肩関節の水平外転です。これはリアレイズの動作をイメージするとわかりやすいです。実際に手に何も持たずにリアレイズの動きを行うと、三角筋後部に力が入る感覚をつかめてきます。
2.三角筋後部に効かせるためには肩甲骨の動きが重要
三角筋後部のトレーニングを行ったことがある方ならわかると思いますが、正直効かせるのが難しいですよね。
『これ本当に効いているのかな?』『三角筋後部じゃなくて僧帽筋が疲れる』なんてことも多いのではないでしょうか。
そこで、三角筋後部に効かせるためのポイントを紹介していきます。三角筋後部のトレーニングの際は、肩甲骨の動きを意識しましょう。
具体的には「肩甲骨を外転」させた状態で「固定」します。肩甲骨の外転とは、肩甲骨を外側に張り出すイメージです。張り出した状態でそのまま固定することで、三角筋後部に刺激を与えやすくなります。動作中に肩甲骨が一緒に動いてしまうと、僧帽筋の関与が高まってしまうからです。
これは後ほど紹介するリアレイズやフェイスプルなど、三角筋後部を鍛える際にはすべて共通する点ですので、意識してみましょう。
3.三角筋後部を鍛える際は重量よりも効かせる感覚を重視しよう
三角筋後部を鍛える際は、高重量を扱うよりも三角筋後部に効いている感覚を意識することが大切です。なぜなら、そもそも三角筋後部で高重量を扱える種目が少なく、そして高重量を扱ってしまうと僧帽筋へ負荷が抜けるなどで刺激を与えられないからです。
そのため、回数や収縮、ストレッチなどを意識することで、総合的に負荷を与えていきましょう。
4.三角筋後部を鍛える際にオススメなトレーニング種目
実際に三角筋後部を鍛える際にオススメな種目を紹介していきます。三角筋後部に関しては種目によって効いている感覚が掴みやすい種目・掴みにくい種目とわかれるため、自分に合ったトレーニングを見つけましょう。
4-1.ダンベルリアレイズ
まず一つ目の種目は、ダンベルリアレイズです。三角筋後部のトレーニングの中でも定番の種目ですよね。なかなか難しい種目ですが、三角筋後部を発達させるには欠かせません。
リアレイズのやり方
まずはリアレイズのやり方から見ていきましょう。また、リアレイズにはスタンディングで行うものとベンチに座って行うものがありますが、まずは安定したフォームを習得するためにここでは座った状態でのリアレイズを解説していきます。
- 両手にダンベルを握り、ベンチに軽く座る。この時ダンベルはサムレスグリップ(親指は巻かない)で強く握り込まないようにし、小指と薬指に力を込めることを意識※親指に力が入ってしまうと三角筋後部への刺激を感じにくくなるため
- 上体が地面と平行になるくらいまで前かがみになる。目線はあげずに下を向く
- 肘を軽く曲げ(120度〜130度)、手の甲を上にした状態で肘を後方に引いていく
- 上腕が地面と垂直になるまで上げ、三角筋後部の収縮を感じたらゆっくりと戻していく。ダンベルの軌道は弧を描くように持ち上げ流ことを意識
- 負荷が抜けきらないところで切り返す
この動きを繰り返していきます。
スタンディングで高重量でリアレイズを行っている方もいますが、反動を使いやすかったり僧帽筋が関与したりするため、まずは座った状態で効かせることを意識しましょう。また、リアレイズを行っていると動作の途中で上体が上がってしまうことがよくあります。これはサイドレイズのような動作になってしまって三角筋後部から負荷が抜けてしまうので気をつけましょう。リアレイズに関してより詳しい内容が知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
【体制が辛い場合】
腰を痛めているなど、上記で説明した姿勢(ベンチに座って上体を前に倒す)が辛い方もいるかと思います。その場合は、インクラインベンチに対して上体を預けてリアレイズを行いましょう。
具体的には、インクラインベンチを40~50度にセットして胸を背もたれにつけます。この時背中を丸めることで、三角筋後部に効かせやすくなります。
リアレイズの重量設定と回数の目安
リアレイズはミッドレンジ種目のため三角筋後部の中では重量を扱いやすい種目ですが、あまり重量を追いすぎると三角筋後部に効いている感覚を掴めません。そのため、まずは軽めに重量設定を行うことをオススメします。
具体的には8~12kg前後で15回を目安に3セット行うようにしましょう。通常であれば8~12回がセオリーとされていますが、重量を軽くした分回数で刺激を強めています。
4-2.マシンリアレイズ
マシンリアレイズとは、マシンを利用したリアレイズです。大胸筋を鍛えるペックフライのマシンで行うことができます。
マシンリアレイズのやり方
まずはマシンリアレイズのやり方を解説していきます。
- ペックフライマシンに逆向きに座った際に、グリップの位置と肩の位置が同じ高さになるよう椅子を調節する
- 可動域が最大限広くなるよう、グリップの位置を調節する
- ペックフライマシンに逆向きに座る。パットに胸をしっかりとつけることを意識
- オーバーハンドグリップ(順手)でグリップを握る。この時あまり強く握り込まず、小指側に力を入れることを意識
- しっかりと胸を張って肩甲骨を外転(外に張りだすこと)し、固定する※ここがスタートポジションです
- 両手に持ったグリップを外側に開いていく。この時も肩甲骨が動かないことを意識
- 三角筋後部が収縮するまで開いたら一度止め、ゆっくりと戻していく
- 三角筋後部から負荷が抜けきる直前で切り返す
この動きを繰り返していきます。
マシンリアレイズは軌道が決まっているため、ダンベルリアレイズよりは三角筋後部に効かせやすいという特徴があります。さらに高重量を扱えるため、ジムにマシンがあるならばぜひ取り入れたい種目です。ポイントは肩甲骨を固定すること、開いた際に収縮、戻す際にストレッチを意識することです。常に三角筋後部に負荷が乗せ続けましょう。
マシンリアレイズの重量設定と回数の目安
マシンリアレイズはダンベルリアレイズよりも重量をあげても、三角筋後部へと刺激を与えやすい種目です。そのため、少し重めの重量を扱うことを意識しましょう。
具体的にはギリギリ8回できる重さ×3セットです。重さで可動域が制限されても、ネガティブ動作で負荷を乗せることができるのでオススメです。
4-3.ライイングインクラインリアレイズ
ライイングインクラインリアレイズとは、インクラインベンチに横向きで寝た状態で行うリアレイズです。通常のダンベルリアレイズの場合、重力の関係でスタートポジションで負荷をかけることができません。しかし、寝た状態でリアレイズを行うことでスタートポジションからしっかりとストレッチをかけることができます。三角筋後部にもっともストレッチをかけられる種目のため、取り入れるべきトレーニングです。
ライイングインクラインリアレイズのやり方
まずはライイングインクラインリアレイズの正しいフォームを解説していきます。
- ベンチを30度〜40度に倒し、横向きに寝る
- 下にある方の手で上体を支え、上の手でダンベルを持ち体の前でセットする。この時ダンベルの向きは小指側を上にし、小指と薬指で引っ掛けるようにして持つ
- 肘を通常のリアレイズ同様120度〜130度ほど軽く曲げておく
- 肘の角度はそのまま変えずにダンベルを身体の後方に向かって上げていく。この時、ダンベルの軌道は肩を支点として弧を描くように上げていき、なるべく小指を遠くに持っていく意識で行うと効果的
- 上腕が地面と垂直になる位置までダンベルを上げ、三角筋後部の最大収縮を感じたらゆっくりと戻していく
- 戻す際はストレッチを感じながら下ろしていき、肘が口と同じ位置に来たら止める
- 最大ストレッチをかけながら、反動を使わずにダンベルを上げていく
この動作を繰り返していきます。片手のセットが終わったら逆側でも行いましょう。
ライイングインクラインリアレイズはストレッチを目的としたトレーニングです。そしてスタートポジションですでにストレッチをかかっているため、初動はなるべくゆっくりとした動作を心がけましょう。より詳しく知りたい場合はリアレイズの記事内(第5章リレイズのバリエーション)を参考にしてください。
ライイングインクラインリアレイズの重量設定と回数の目安
ライイングインクラインリアレイズはかなり軽い重量で行います。やってみればわかりますが、そもそも高重量は扱えません。15回を目安に3セット行うのですが、1回1回の動作を丁寧に心がけ、毎回ストレッチがかかっていることを意識しましょう。
また、重量に関しては慣れるまでは3kgのダンベルでも十分です。慣れてきたら次第に重量をあげ、5~7kgでセットを組めるようにしましょう。
4-4.フェイスプル
フェイスプルとは、ケーブルマシンとロープアタッチメントを利用して顔に向かって重りを引くトレーニングです。三角筋後部を収縮させるのに適しています。
フェイスプルのやり方
まずはフェイスプルの正しいやり方から解説していきます。
- ケーブルの位置を自分の肩と同じ場所でセットする
- ロープアタッチメントを装着する
- 足を肩幅に開いて直立する
- ロープのコブに小指側をつけ、手のひらで軽く握りこむ
- 手の甲を上にし、プレートが少し浮いた状態になるまで後ろに下がる。この時、しっかりと胸を張ることを意識する。※ここがスタートポジション
- 左右のロープを開く意識で肘を外側に開き、顔の近くまで引き寄せていく
- 両手が耳の横に来るまでロープを引ききる。この時に三角筋後部を最大収縮させる
- 三角筋後部に常に負荷を感じながらゆっくりと同じ軌道で戻していき、肘が伸びきる直前で切り返す
この動きを繰り返していきます。
フェイスプルのポイントも、やはり肩甲骨を外転させて固定することです。ケーブルを引く際に肩甲骨を寄せてしまうと僧帽筋が関与するため、なるべく肩甲骨は動かさないように注意しましょう。また、毎回三角筋後部が収縮した状態で1~2秒停止すると三角筋後部に強い刺激を与えることができます。
フェイスプルに関してより詳しい内容が知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
フェイスプルの重量設定と回数の目安
フェイスプルは収縮種目のため、そこまで重量を扱う必要はありませんし、高重量に設定してしまうと体が重りに引っ張られて三角筋に効かせにくくなってしまいます。
そのため、重量はあまり追わずに回数を多めに設定しましょう。具体的には20~25回を目安に3セットです。収縮を意識することで三角筋後部が熱くパンプするのを感じられるはずです。
4-5.ケーブルリアレイズ
ケーブルリアレイズとは、ケーブルを利用して行うリアレイズです。フェイスプル同様に三角筋後部に対して収縮を与えることができるため、両方試して効かせやすい方を選択しましょう。
ケーブルリアレイズのやり方
まずはケーブルリアレイズのやり方を解説していきます。
- ケーブルの位置を自分の頭より少し高い位置でセットする(ケーブルマシンを2つ使用するため、両方とも同じ高さでセットする)
- ケーブルマシンの丸いゴム部分を包み込むようにして握る。この時、両手をクロスさせる
- 両手でケーブルマシンを握り、数歩後ろに下がる
- 足を肩幅に開いて直立し、胸を張る※ここがスタートポジション
- 左右に持ったケーブルを外側に開いていく。この時、肩甲骨が寄らないように注意する
- 三角筋後部が収縮したら一度止め、ゆっくりと戻していく
- 負荷が抜けきる直前で切り返す
この動きを繰り返していきます。
ケーブルリアレイズは肘と肩関節の両方を動かすため、慣れるまでは難しいかもしれません。しかし、コツさえ掴めば三角筋後部に効かせやすい種目でもあります。
ケーブルリアレイズの重量設定と回数の目安
ケーブルリアレイズもフェイスプル同様に20~25回×3セット行い、重量ではなく回数で負荷を与えていきましょう。ケーブルを利用しているため常に負荷をかけることができ、強烈なパンプ感を得ることができます。
4-6.三角筋後部を狙ったラットプルダウン
通常のラットプルダウンは広背筋を鍛えるために行いますが、少しフォームを変えることで三角筋後部を狙うとも可能です。
三角筋後部を狙ったラットプルダウンのやり方
- ラットプルダウンのアタッチメントをパラレルグリップに変更する
- 通常のラットプルダウン同様に膝パットで下半身を固定し、パラレルグリップを握る。この時、親指は巻かないようにしておく
- 上体を少し後ろに倒し、しっかりと胸を張る。できるだけ肩甲骨を外転し、固定する※ここがスタートポジション
- 通常のラットプルと同じように、バーを顎に向けて引いていく
- 三角筋後部が収縮したら一度停止し、ゆっくりと戻していく
- 負荷が抜けきる直前で切り返す
この動作を繰り返していきます。通常のラットプルダウンを脇を開いて肩甲骨を外転させるイメージで行うと、三角筋後部に効かせることができます。
三角筋後部を狙ったラットプルダウンの重量設定と回数の目安
この種目はある程度重い重量を扱うことができます。なぜなら、三角筋後部だけではなく大円筋や広背筋も関与するからです。三角筋後部にもしっかりと刺激を与えられるため、オススメです。
私は通常のラットプルダウンを3セット行った後に三角筋後部・大円筋を狙って10回×2セットを目安に行っています。
5.三角筋後部のトレーニング一例
最後に、実際に私が行っている三角筋後部のトレーニングの一例を紹介していきます。
私が三角筋後部を鍛える際は
・肩の日(三角筋前部、中部、後部)
・背中の日+三角筋後部
と分けることが多いのですが、最近では背中の日に取り入れることが多くなっています。なぜなら、チンニングやラットプルダウンなど、広背筋を狙っていてもある程度三角筋後部にも刺激が入るからです。
前半で三角筋後部になんとなく刺激を与え、後半にピンポイントで狙うことで効率よく発達させることができます。
- ダンベルリアレイズ 15回×3セット(インターバル:50~60秒)
- マシンリアレイズ8×3セット(インターバル:50~60秒)※高重量を扱う意識
- ライイングインクラインリアレイズ 15回×3セット(インターバル:50~60秒)※一回一回の動作に時間をかけ、ストレッチを意識する
- フェイスプル or ケーブルリアレイズ 20~25回×3セット(インターバル:50~60秒)※収縮・パンプ感狙い
背中のトレーニングと合わせて90分程度です。(三角筋後部単体は30分前後)
6.まとめ
今回は三角筋後部を効率よく鍛えるためのコツやオススメな種目を解説してきました。三角筋後部は狙うのが難しいからこそ、いろいろな種目や刺激を与えることを意識しましょう。最初はなかなか変化が感じられないかもしれませんが、続けていると必ず結果が出ます。
今回は紹介した内容を参考に、大きく発達した三角筋後部を手に入れましょう!
コメント