インナーマッスルを鍛えることの重要性は、近年高まりつつあります。これは、アスリートにおいてはもちろんのこと、一般の人々においてもインナーマッスルの認知度や重要性が理解されてきているためです。
お腹周りのインナーマッスルを鍛える方法には、ドローインがあります。
このドローインの特徴としては、手軽にどこでも行えるトレーニングであることです。
本記事ではこのドローインについて詳しく解説します。
1.ドローインとは?
ドローインとは、お腹を凹ませて腹横筋や多裂筋を刺激する種目です。このドローインによって、お腹周りのインナーマッスルを手軽にいつでもどこでも鍛えることが出来ます。
ただし、クランチなどとは異なり、腹直筋を鍛えるにはあまり向いていません。
1-1.お腹周りのインナーマッスルを手軽に鍛えることが出来る
ドローインは、お腹周りのインナーマッスルを手軽に鍛えることが出来る種目です。この種目は、特別な器具や場所、時間を問わずいつでも出来ることが特徴です。
腹筋運動やクランクといったお腹周りを鍛えるトレーニングは、場所や姿勢が決まっているものの、ドローインは寝て行う以外にも立位、座位といった他の姿勢でも出来ることがポイントです。
インナーマッスルを鍛えることの意義としては、日常生活への影響が大きいです。ボディメイクに関して言えば、内蔵の位置が上がることで、ぽっこりお腹を解消できることが挙げられるでしょう。
1-2.ドローインと腹筋運動は異なり腹横筋などを鍛えるのに効果的
ドローインは、クランチやレッグレイズなどとは異なり、腹直筋を鍛えるトレーニングではありません。ドローインは、体幹の中でもローカル筋群といわれるインナーにある筋肉を鍛えるトレーニングです。
ローカル筋群の代表的な筋肉は、多裂筋や腹横筋があります。特に腹横筋は、腹直筋とは異なりお腹周りに横向きについている筋肉であるため、シェイプアップなどには最適です。
一方でクランチやレッグレイズなどは腹直筋を鍛えるための種目であるため、狙う筋肉が異なります。
2.ドローインの効果
ドローインの効果としては大きく2つあり、一つ目はぽっこりお腹を解消すること、もう一つは姿勢矯正に効果的であることです。
ここではこれらについて詳しく解説します。
2-1.ドローインはぽっこりおなかの解消に効果的
ドローインはぽっこりお腹の解消には効果的です。なぜならば、お腹周りのインナーマッスルを鍛えて筋肉のコルセットを作り上げることによって内臓の位置が上がるためです。
お腹が出ている原因は、お腹周りの脂肪がついているだけではなく、内臓の位置が下がっていることにもあります。
これを解消するためにドローインは効果的であることが言えます。
2-2.ドローインは姿勢が良くなる
ドローインは腰痛予防に効果的です。これは、インナーマッスルを鍛えることによって脊柱の安定につながり、腰痛予防になることが報告されているためです1)。
またこれだけではなく、脊柱が安定することによって、姿勢がよくなり肩こりが解消されることやポッコリしたお腹を姿勢だけで改善することにもつながります。
つまり、腹直筋を鍛えるだけではなく、体幹のインナーマッスルを鍛えることによってもスッキリとしたお腹周りを実現することが出来るのです。
2-3.ドローインはダイエットにもおすすめ
ドローインはダイエットにもおすすめのトレーニング種目です。
なぜならば、腹横筋を鍛えることでお腹周りを引き締めるだけではなく、ドローインをしながら、「寝る・立つ・座る」といった状態を保つことで、何もしていない状態よりもカロリーを消費するためです。
例えば、歩くという動作でドローインを用いた比較研究では、通常の歩行・エクササイズウォーキングよりも、ドローインをしながら歩行動作をした方が、エネルギー代謝がよく、BMIの減少に役立つことが報告されています2)。
つまり、体脂肪の減少に役立つことが言えるためダイエットにはおすすめです。
これに加えて、インナーマッスルを鍛えることによってぽっこりお腹を解消することも出来ます。
3.ドローインの基本的なやり方
ドローインの基本的なやり方としては、次のような手順があります。
- 仰向けに寝て膝を立てる
- 何度か呼吸をして体の力を抜く
- 息を吐きながらお腹をへこませる
- へこんだ状態をキープする
3-1.仰向けに寝て膝を立てることで骨盤を後傾させる
ドローインの基本的なやり方としては寝た状態で行います。そのため仰向けに寝て膝を立ててリラックスした状態にします。
リラックスした状態にすることによって、アウターマッスルの活動を抑制出来るため、腹横筋などのインナーマッスルを効果的に鍛えることが出来ます。
この時、膝の角度を60°程度にすると骨盤が後傾し、腰を反らせすぎずに腹横筋にうまく効かせることが出来ます。
3-2.何度か呼吸をして体の力を抜くことでインナーマッスルに意識を向けやすくする
ドローインは初心者であればリラックスした状態で行うことをおすすめします。そのためには、呼吸が非常に重要です。
なぜならば、呼吸と筋肉の緊張は密接に関係しており、呼吸をすることによって、体の力が抜けるからです。
そのため仰向けの姿勢になったら何度か深呼吸をして、体の力が抜けていくことを実感しましょう。
特に息を吐いている時に肩や胸、腕などの筋肉がリラックスしていることを感じることによって、インナーマッスルの活動を活発にすることが出来ます。
3-3.息を吐きながらお腹をへこませる
仰向けに寝て膝を立ててリラックスした状態が作れたら、息を大きく吸い込んで、ゆっくりと息を吐きながらお腹をへこませます。
この時に、脇腹あたりの筋肉が収縮していることを感じると良いです。もし分かりにくければ、手を腰回りなどに置き、腹横筋が収縮していることを感じましょう。
3-4.へこんだ状態をキープして元に戻す
ドローインでは、へこんだ状態をキープすることで、腹横筋の筋活動を活発にします。
この時の腹横筋の筋活動は、等尺性収縮という収縮方法であるため、遅筋繊維が積極的に動員されます。遅筋繊維は、速筋繊維よりも筋が細いため、肥大化しにくいことからシェイプアップには最適なのです。
このへこんだ状態は出来るだけ長い時間へこませておくと良いですが、慣れないうちは10秒程度からスタートすると良いでしょう。
慣れてきたら30秒程度を目安に徐々に時間を伸ばしましょう。ドローインできる時間が長いほどポッコリおなかを解消するのには効果的です。
キープする時間を延ばすときの設定時間としてはドローインできる時間×1.1秒を目安に設定すると、心理的な面においてもモチベーションが高まるため効果的です。
30秒できる人であれば33秒、40秒できるのであれば44秒といった時間を目安にしましょう。
また、へこんだ状態をキープする時の呼吸は、腹式呼吸ではなく、胸式呼吸で行うことによってお腹周りの筋肉の緊張を緩めずに呼吸することが出来ます。
4.ドローインの5つのポイント
ドローインを行う上でのポイントは大きく分けて5つのポイントがあります。
- 動きが分かりにくい時は手を当ててみる
- 出来るだけリラックスして行う
- 肛門を閉めることでより効果的になる
- 呼吸を止めない
- 食事の後は行わない
4-1.動きが分かりにくいときは手をあててみる
ドローインで動員されるインナーマッスルは体幹深部にある筋肉であるため、動いているかどうかわかりにくいことがあります。
こうした場合には、骨盤の少し上あたりに手を置くことによって、腹横筋の収縮が分かりやすいためおすすめです。
ポイントは、お腹をへこます前からへこませていくにつれて、腹横筋が固くなっていくことを感じることです。
4-2.出来るだけリラックスして行う
ドローインで重要なことは、出来るだけリラックスした状態で行うことです。特に初心者であればドローインの際に他の筋肉に力が入ってしまい、効果的に体幹のインナーマッスルを刺激することが出来ません。
基本的なドローインが仰向けに寝た姿勢なのは、リラックスした状態で行うためでもあります。
最初は、リラックスした状態で行ってしっかりと腹横筋などに効かせることが出来るようになったら、難易度を高めて座位や立位、ウォーキングなどと組み合わせることでより効果的になります。
4-3.肛門を閉めることでより効果的になる
ドローインの際には、お腹をへこませると同時に肛門を閉める事によって、体幹のインナーマッスルの筋肉の収縮が起こるため、より効果的です。
4-4.呼吸を止めない
ドローインの注意点として挙げられることとしては、呼吸を止めないことです。呼吸を止めてドローインを行ってしまうと、血圧が急激に上昇してしまうため良くありません。
4-5.食事の後は行わない
ドローインは、食事の後は行わないようにしましょう。なぜならば、ドローインは体幹のインナーマッスルを鍛える種目であるため、食後に行ってしまうことで内臓が圧迫されて消化不良を起こしてしまう可能性があります。
食後は1時間程度空けて行うようにしましょう。ただし、たくさん食べた場合などは、より多くの時間空けたほうが良いです。
5.ドローインをより効果的に行う方法
ドローインは基本的な姿勢として仰向けに寝た姿勢で行います。
しかしながら、運動強度を高めて寝た姿勢よりも効果的に行うためには、立位姿勢や座位姿勢、ウォーキングなどの有酸素運動と組み合わせることによって効果は高まります。
ドローインの感覚をつかむといった意味合いでは、四つん這いになって行うことも効果的でしょう。
5-1.四つん這いのドローインは感覚をつかみやすい
ドローインは、四つん這いの姿勢になって行うことによって、内臓が締め上げられやすくなるため、感覚をつかむ点では効果的です。
しかしながら、筋活動の水準としては、四つん這いよりも寝た姿勢や座位、立位といった体勢のほうが高いことから、あくまで感覚をつかむことにおいて効果的です。
四つん這いになって行う場合には、両手を肩幅程度に開き、膝は直角に曲がるように四つん這いになります。
この時の体重は、両手両足に平均的にかかると良いでしょう。
その他は基本的なドローインと変わりませんが、内臓が押し上げられる感覚を重要視すると効果的になります。
5-2.ドローインを立位姿勢で行うことで電車移動の時間も有効に使える
ドローインを立位姿勢で行う場合には、足を肩幅程度に開いて背筋を伸ばします。あとは基本的なドローインのやり方と変わりませんが、立位姿勢で行えるようになると、電車の中など立った状態で出来ます。
ドローインは出来るだけ1日の時間の中で多く取り入れたい種目であることから、立位姿勢でのドローインをマスターすることは、シェイプアップや腰痛予防には効果的です。
5-3.ドローインを座位姿勢で行うことで仕事中も有効活用
ドローインを座位姿勢で行う場合には、いくつかのやり方があります。
永井ら3)の研究によれば安定性の異なる座位でのドローインは、片足挙上とドローインを組み合わせると効果的であることが報告されています。
つまり、座位での姿勢をマスターした後は、片足を挙げた状態でドローインをすることによって、座位姿勢でのドローインの効果は大幅に向上します。
永井らのデータによると、安静時の筋厚と比較すると座位姿勢でのドローインは2.1倍・片足挙上のドローインは2.4倍である事を報告しています。
やり方としては、椅子に浅く腰かけ、背筋を伸ばします。ここからは基本的なドローインと同じです。
座位姿勢における注意点としては、バランスボールやバランスディスクなどで座位姿勢ドローインを行うことは、不安定性を増すことから、アウターマッスルの活動を活発にしてしまうことから、ドローインで狙う腹横筋には効果的ではありません)。
5-4.ドローインを有酸素運動と組み合わせることで脂肪燃焼効果も期待できる
ドローインと有酸素運動を組み合わせることは、エネルギー代謝に有効であり、BMIの減少に役立つことが報告されています2)。
ドローインとウォーキングを組み合わせたやり方は、出来るだけお腹をへこませるというよりも、呼吸が出来る状態で、普段よりも腹囲が小さくなることをこころがけるだけで効果的です。
ただし、ドローインは歩行しながら行うことは難しいため、安静時のドローインで感覚をつかんでから取り組むようにすると良いです。
6.まとめ
ドローインは、腹直筋を鍛えるクランチなどとは異なり、体幹のインナーマッスルを手軽に鍛えることが出来る種目です。
このドローインの効果としては、大きく分けて腰痛予防とダイエットに効果があります。
ドローインには、基本的なやり方に加えて、ポイントやより効果的に行う方法もあります。
これらをうまく行い、ダイエットや腰痛予防に役立ててください。
1)Richardson CA, Hodges PW, Hides JA 齋藤明彦(訳)(2008). 腰痛に対するモーターコントロールアプローチ 医学書院, p15.
2)屋嘉比章紘・久保晃(2017).ドローイン歩行の身体反応 理学療法科学32(2):307-311
3)永井 秀幸, 赤坂 清和, 乙戸 崇寬, 澤田 豊, 大久保 雄(2014).安定性の異なる座位での下腹部引き込み動作が腹部深層筋に与える影響 第49回日本理学療法学術大会抄録集.
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