割れた腹筋は多くの男性が憧れるパーツですよね。この腹筋を効果的に鍛える方法の1つとしてクランチ(トランクカール)があります。
本記事ではこのクランチについて詳しく解説します。
1.クランチとは
クランチとは、シットアップとは異なり、上体を丸めるだけで行う腹筋運動です。このクランチは腹直筋を鍛える目的で行われます。
クランチは別名トランクカールとも呼ばれるトレーニング方法です、
クランチについては下記の通りです。
1-1.クランチは腹直筋全体を刺激することが出来る
クランチでは腹直筋上部だけに刺激が入ると思われがちですが、研究結果では科学的な証拠があるわけではありません。
内山1)の報告によれば、クランチ中の腹直筋の上部と下部の筋活動に差がみられなかったことが示されています。
つまり、腹直筋上部はクランチ、腹直筋下部はレッグレイズというわけではなく、クランチは腹直筋全体に刺激を入れることが出来るということです。
1-2.自宅で腹直筋を鍛えるのであればクランチはおすすめ
自宅で腹直筋を鍛えるのであれば、クランチはおすすめである一方、ジムで腹直筋を鍛えるのであれば、別の腹筋運動がおすすめです。
なぜならば、腹直筋を鍛えるのに最も効果的な腹筋運動がチンニングマシンでのレッグレイズであることが半田ら2)の研究結果によって示されているからです。また、ローマンベンチでのシットアップも効果的であるため、ジムで行うのであればこれらを取り組んだ方が効果的に腹直筋を刺激することが出来ます。
しかしながら、自宅にはローマンベンチやチンニングマシンなどは無いことが多く、自宅で腹直筋を鍛えるのであれば、クランチは有効な手段です。
1-3.腹筋運動の中でも初心者にはクランチがおすすめ
腹筋運動中でも初心者にはクランチがおすすめできます。なぜならば、シットアップやレッグレイズといったその他の腹筋種目よりも、クランチは大腿直筋や脊柱起立筋といった筋肉の動員を妨げ2)腹直筋をピンポイントで刺激しやすいためです。
このことから、腹直筋を初心者が鍛える上ではクランチは効果的であることが言えます。
2.クランチのやり方
クランチのやり方としては下記の通りです。
2-1.膝を90度に曲げ膝から下が床と平行になるように上げる
膝は90度に曲げて足を上げ、膝から下が床と平行になるようにしましょう。初心者の場合であれば、床に足をつけて膝を90度に曲げると良いです。
なぜならば、足を上げるパターンと足を付けるパターンがありますが、足を上げると大腿直筋に大きく負担がかかり、腹直筋を追い込めない可能性があります。
ただし筋トレ中級者以上であれば、大腿直筋に負担がかかりにくく、負荷が高いことが言えます。
そのため、筋トレ中級者以上であれば、足を上げて行っても問題なく腹直筋に負荷を乗せられますが、初心者であれば足をつけたほうが効果的に腹直筋に刺激を入れることが出来ます。
2-2.手は頭上に伸ばして行う
Alicja Rutkowska-Kucharska and Agnieszka Szpala3) Figure1.より一部抜粋
手は頭上に伸ばした状態でクランチを行いましょう。
一般的に知られている手を首の後ろに置く方法は手を補助的に用いて腹直筋を追い込むのに効果的です。
しかしながら、手を首の後ろに置いてしまうことによって、脊柱起立筋の筋活動を促進してしまい腹直筋の筋活動が小さくなってしまうためあまりおすすめできません。
手を頭上に伸ばして行うと、脊柱起立筋の活動が抑えられて腹直筋の筋活動は最も高くなります。これは足を付けた場合と足を上げた場合どちらにおいても腹直筋の筋活動は大きくなります。
また、足を付けた場合には、大腿直筋の活動も抑えることが出来ることから、初心者が腹直筋を鍛えるには最適であると言えます。
このように手の位置をコントロールすることによって強度をコントロールすることが出来るため、手を頭上に伸ばして行うときついという人は、首の後ろに置いても構いません。
2-3.肩甲骨より上だけを床から離して体を丸める
クランチでは、腰を床から離さずに、肩甲骨よりも上だけを床から離し体を丸めるようにして動作を行います。
腰を床から離してしまうとシットアップという腹筋種目になり、腹直筋の筋活動は小さくなってしまいます。
2-4.背中だけがつくまで戻す
クランチでは肩甲骨だけがつくまで戻しましょう。頭が床についてしまうと負荷が抜けてしまうため、効果的なクランチを行うことは出来ません。
3.クランチを効果的に行うための3つのポイント
クランチを効果的に行う場合の3つのポイントは下記の通りです。
3-1.動作の速さは出来るだけ早くすると効果的になる
Francisco J. Vera-Garcia et al. 3) Figure2より改変抜粋
クランチの動作は出来るだけ早くすることで効果的になります。Vera-Garcia et al.4)の研究結果によれば、クランチの動作とスピードは腹直筋の筋活動に関与しており、スピードが速くなるほど腹直筋の筋活動は大きい事を報告しています。
この研究結果では、動作を4秒で行った場合と3秒、2秒、1秒、最速で行った場合を比較検討しており、最速で行った場合に腹直筋の筋活動は最大になったことが報告されています。
このことから、1秒以内で体を丸める動作を行うと高い効果を得ることが出来ます。
3-2.クランチは腹圧が高いほうが効果的
内山1)図4より抜粋
クランチは腹圧を高めた状態で行うと効果的に行えます。
内山1)の研究結果では、呼吸を意識させずにクランチを行わせた場合と息を吐きながら行わせた場合(呼息)、息を大きく吸い込んで止めた場合(最大吸息位)を比較しています。
この場合では、息を大きく吸い込んで止めた場合に腹直筋下部において高い筋活動が認められています。
つまり腹圧を高めた状態でクランチ動作を行うと腹直筋下部も効果的に刺激出来ます。
3-3.クランチは収縮を意識する
クランチでは、収縮を意識しましょう。収縮動作を意識して行うことによって、効果的なクランチになります。
Sandro Sperandei et al. 5)の研究結果では、クランチの動作の中で戻す動作よりも収縮させることで大きな筋活動になることが報告されています。
つまり、クランチではストレッチを効かせることに意味はなく、素早い速度で収縮させることが効果的なクランチのポイントです。
4.クランチのバリエーション
クランチには様々なバリエーションがあります。
バリエーションは下記の通りです。
4-1.外腹斜筋と内腹斜筋を鍛えるサイドクランチ
サイドクランチは外腹斜筋と内腹斜筋を鍛える目的で行うクランチです。外腹斜筋・内腹斜筋は、姿勢の保持効果があるためボディメイクをする上では非常に重要な筋肉です。
やり方は、下記の通りです。
- 両膝を軽く曲げて倒し上体は真っすぐにしたまま横になる
- 膝を倒した方に体をねじりながら上体を上げる
- 上体を元のポジションに戻し繰り返し行う
サイドクランチを行う上では、手を脇腹にあてて行うことによって収縮を意識しやすくなるためおすすめです。
4-2. 安定性を鍛えるリバースクランチ
リバースクランチは、不安定な状態で行うため体幹の安定性を高めます6)。ただし、腰への負担は大きくなるため腰痛持ちの人は避けたほうがいいです。やり方としては、下記のようなやり方があります。
一般的なリバースクランチのやり方
一般的なリバースクランチのやり方としては、クランチと同様に横になり膝を90度に曲げます。リバースクランチは、上体を曲げるのではなく、足を胸に引き付けるようにして動作を行い腹直筋を鍛えます。
この時お尻が上がるようにすると、腹直筋を追い込むことができます。
ディクラインベンチを用いたリバースクランチ
ディクラインベンチを用いたリバースクランチでは、ベンチの角度をつけるほど負荷が高くなります。このリバースクランチでは、レッグレイズのように足をのばして行います。
やり方は下記の通りです。
- ディクラインベンチの角度をつける
- ディクラインベンチに横になりつかまる
- 足を延ばしたまま股関節が90度になるまで上げる
バランスボールを使ったリバースクランチ
バランスボールを使ったリバースクランチは、不安定性が高いため体幹の安定性を鍛えるのに適しています。
やり方としては下記の通りです。
- 腕立て伏せのような体勢で手をつく
- バランスボールに足を乗せる
- バランスボールを転がしながら膝を胸に引き寄せる
- 元のポジションに戻して動作を繰り返す
バランスボールを用いたリバースクランチでは、ボールの位置が足首に近いほど負荷が高くなります。
負荷が高いと感じた場合は脛や膝といった体幹部に近い場所にボールを置くことによって負荷は弱まります。
4-3.最も負荷の高いバイシクルクランチ
バイシクルクランチは、クランチの中でも最も負荷が高いです。Mark Anders7)によれば、バイシクルクランチは一般的なクランチの248%腹直筋の筋活動が高いことを報告しています。
つまり、クランチで高い負荷を得るのであれば、このバイシクルクランチが最も効果的であることが言えます。
このバイシクルクランチは、サイドクランチとリバースクランチを合わせたような種目でやり方としては下記の通りです。
- 横になり手を耳に当て膝を45度程度上げる
- 右足(左足)を股関節が90度になるように引き寄せ左肘(右肘)を腿につける
- 左足(右足)を股関節が90度になるように引き寄せ右肘(左肘)を腿につける
- 動作を繰り返す
このバイシクルクランチのポイントは、使っていない足を常に床から上げておくことです。
5.まとめ
クランチは背中を丸める事によって腹直筋を鍛えることが出来るトレーニングです。
腹直筋を鍛えるのであれば、チンニングマシンを用いたレッグレイズやローマンベンチを用いたシットアップのほうが効果的であるため筋トレ初心者や自宅でトレーニングするにはおすすめです。
このクランチには細かいやり方やポイントがあり効果的なクランチを行うためには欠かせません。
またクランチはバリエーションも様々なため、自分に合ったクランチを行いましょう。
本記事を参考にしてクランチを行い、美しい腹筋を手に入れてください。
参考文献
1)内山秀一(2013).トランクカール中の呼吸方法と体幹筋の筋活動量との関係 東海大学スポーツ医科学雑誌 25:29-36.
2)半田徹,加藤浩人,長谷川伸,岡田純一,加藤清忠(2009).腹部トレーニング7種目における腹直筋上部、腹直筋下部、外腹斜筋および大腿直筋の筋電図学的研究 体育学研究54:43-54.
3)Alicja Rutkowska-Kucharska and Agnieszka Szpala(2010).Electromyographic Muscle Activity in Curl-Up Exercise with Different Positions of Upper and Lower Extremities, Journal of Strength and Conditioning Research, 24(11):3133-3139.
4)Francisco J. Vera-Garcia, Flores-Parodi, Belén; Elvira, José L L; Sarti, M Ángeles(2008)Influence of Trunk Curl-Up Speed on Muscular Recruitment, Journal of Strength and Conditioning Research, 22(3):684-690.
5)Sandro Sperandei, Marcos André Pereira de Barros, Ricardo Sartorato(2007).Electromyographic Comparison of The Upper and Lower Rectus Abdominis during Abdominal Exercise, ISBS 25 International Symposium on Biomechanics in Sports.
6) Jeff Stephenson and Ann M. Swank(2005).Core Training: Designing a Program for Anyone, Strength and Conditioning Journal, 12(4):10-13.
7)Mark Anders(2001).New Study Puts the Crunch on Ineffective Ab Exercises, Ace Fitness Matters,pp9-pp11.
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