バックエクステンションは、脊柱起立筋を鍛えるのに効果的な種目です。
しかしながら、一般的に知られている床に伏せた状態で行うバックエクステンションで脊柱起立筋を鍛えるのは、効果的ではありません。
本記事では、このバックエクステンションを効果的に行う方法について解説します。
1.バックエクステンションとは?
バックエクステンションは、上体を折り曲げて伸ばすことによって脊柱起立筋を鍛えることのできるトレーニングです。
1-1.脊柱起立筋を鍛えることでピンとした背筋とクリスマスツリーが手に入る
バックエクステンションの大きな効果としては、ピンとした背筋が手に入ることです。脊柱起立筋は、姿勢に大きく関与しています。なぜならば、脊柱起立筋は3つの筋肉で構成されている中でも棘筋は、背中を伸ばす動作に用いられる筋肉であるためです。
つまり、脊柱起立筋を鍛えることによって、背筋が伸び、良い姿勢が手に入ります。
良い姿勢が手に入ることで、バストとウエストの比が大きくなるためボディメイクをする上では効果的です。
また、クリスマスツリーといわれる筋肉で作り上げられた背中を手に入れることもできます。
これは脊柱起立筋を鍛えることによって隆起した背中によって作り上げられます。
1-2.バックエクステンションは脊柱起立筋を鍛えるのに腰を痛めにくい
バックエクステンションは、脊柱起立筋を鍛える上では腰を痛めにくい種目です。
脊柱起立筋を鍛えるトレーニング方法としては、デッドリフトやローイング種目が挙げられます。
これらの種目とバックエクステンションの違いとしては、多関節種目と単関節種目であることが挙げられます。デッドリフトやローイング種目は、多関節種目であることから関節と関節のズレが起こります。
このズレは、関節に大きな負担をもたらすのに対して、単関節種目はズレが生じないため関節への負担は小さいです。
腰が弱い人においては、脊柱起立筋を鍛えるトレーニングにバックエクステンションがおすすめです。
1-3.バックエクステンションは出来る限りフリーウエイトで行う
※山川他1)の図4より引用
バックエクステンションを行う場合には、出来る限りフリーウエイトで行いましょう。なぜならば、体幹部を前屈させたほうが、脊柱起立筋の筋活動は大きいためです。
山川他1)の研究結果によれば、脊柱起立筋は、体を前屈し元に戻す動作の中で最も前屈させた状態の前後において最も筋活動が大きく働いていることが報告されています。
この研究結果に基づけば、一般的な横になって行うバックエクステンションはほとんど効果が期待できません。バックエクステンションにおいては、可動域を広くとる事が効果的であることが示されているため、脊柱起立筋を鍛えるトレーニングとしてはフリーウエイトでのバックエクステンションが最も効果的です。
フリーウエイトでのバックエクステンションのやり方
フリーウエイトでのバックエクステンションのやり方としては下記の通りです。
2-1.パッドの位置を骨盤にセットする
フリーウエイトでのバックエクステンションでは、パッドの位置を骨盤にセットしましょう。パッドの位置を骨盤にセットすることで、体を前屈する時にうまく丸め込むことが出来ることと、下半身をしっかりと固定することが出来ます。
2-2.プレートを抱える
フリーウエイトで行う場合には、プレートを抱えて負荷を高めましょう。腰に自信が無い場合には、無理せずにプレートを抱えないで行ったほうが良いです。
また、バックエクステンション台には、許容されている重量があるため、この点には注意しましょう。
また、プレートを抱えた状態で体を曲げにくいという人には、手を降ろした状態でプレートを持つという方法もあります。
2-3.上体を深く折り曲げる
実際にセットアップが終わったら、上体を深く折り曲げます。この時に、体を丸め込むようにして折り曲げることで、脊柱起立筋を効果的に鍛えることが出来ます。
2-4.体が真っすぐになるまで持ち上げる
折り曲げたあとは、体が真っすぐになるまで体幹を元に戻します。この時には、体を反るまでいかないようにすると、腰への負担は大きく軽減されます。
また体を反ったとしても、筋活動はそこまで大きくならないので、腰痛になるのを予防するためにも、体は真っすぐにしましょう。
3.フリーウエイトでバックエクステンションを行う場合のポイント
フリーウエイトでバックエクステンションを行う場合には、下記のようなポイントを押さえましょう。
3-1.体を丸めるように折り曲げる
脊柱起立筋を主に鍛えるのであれば、体幹の動きだけを用いて体を丸め込むように折り曲げましょう。
なぜならば、バックエクステンションで股関節を使った動きをしてしまうと、脊柱起立筋よりも大殿筋やハムストリングスに効かせることになってしまいます。
みぞおちを中心として体幹の動きのみで背中を丸めて動作を行うことによって、脊柱起立筋を効果的に鍛えることが出来ます。
3-2.パッドの位置は一般的なバックエクステンションよりも少し上
一般的なバックエクステンションよりも上の位置にパッドをセットすることによって、上体をうまく丸め込むことにつながり、効果的に脊柱起立筋を鍛えることが出来ます。
一般的なバックエクステンションでは、パッドの位置を骨盤よりもやや下にします。
これは、ハムストリングスや大殿筋にも刺激を入れるためです。脊柱起立筋を中心に鍛えるのであれば、体を丸め込むことが効果的であるため、少し上にパッドをセットすると良いです。
4.マシンでのバックエクステンションのやり方
ジムにマシンがあれば、マシンを用いてバックエクステンションを行うことも出来ます。マシンのメリットとしては、座った状態で行うため初心者でも脊柱起立筋に効かせやすいというメリットがあります。
マシンでのバックエクステンションのやり方は下記の通りです。
4-1.シートに座りパッドを調整して股関節の角度が90度になるように調節する
シートに座りパッドの位置を股関節が90度になるようにセットしましょう。この時には、マシンの回転軸に股関節の位置を合わせてください。
4-2.手を胸にクロスしておき背中を丸めないように上体を前傾させる
マシンでのバックエクステンションの場合には、あまり背中を丸めずに行いましょう。
なぜならば、フリーウエイトでのバックエクステンションとは異なり、シートに座るため、背中を丸めて動作を行わなくてもハムストリングスや大殿筋の活動を抑制出来て脊柱起立筋に効かせることが出来るためです。
マシンでのバックエクステンションの場合には、上体を前傾させることを意識すると効果的です。
4-3.背中から足までが真っすぐに伸びる手前まで上体を後方に倒す
マシンでのバックエクステンションでは、背中から足までが真っすぐに伸びる手前まで上体を倒すのが基本です。
真っすぐになる手前で止める事によって筋肉の緊張が解けることなくトレーニングが出来ます。
5.マシンでバックエクステンションを行うポイント
マシンでのバックエクステンションでは、その他のやり方とポイントが異なります。下記のようなポイントを押さえて行いましょう。
5-1.マシンの回転軸に股関節の位置を合わせる
マシンの回転軸に股関節の位置を合わせると、動作を効率よく行うことが出来るため腰への負担が少なくなります。
5-2.体をしっかりと前傾させる
バックエクステンションでは、体をしっかりと前傾させましょう。可動域が狭くなると、マシンでのバックエクステンションの効果は低くなります。
前傾させるときのイメージとしては、みぞおちを股関節に近づけるイメージで行うと良いです。
5-3.胸を張って行う
※丸田他2)の図2より引用
マシンでのバックエクステンションのポイントとしては、体を丸め込むよりも胸を張ることを意識することです。
体を伸ばして行うフリーウエイトでのバックエクステンションとは異なり、マシンでのバックエクステンションでは座位で行います。
このため、胸を張っていたとしても脊柱起立筋を効果的に鍛えることが出来ます。
また、座位での体幹前傾動作における研究2)では、骨盤が前傾していると脊柱起立筋の筋活動が大きい事が報告されています。
ただし、骨盤前傾することに伴って前弯が強まると、腰椎や腰関節への負担は高まる可能性があることも報告されています。
つまり、骨盤が中間位にあることがバックエクステンションでは効果的かつ安全性が高い事が言えます。
そのため、胸を張る程度で骨盤を中間位にすることで、マシンでのバックエクステンションは効率的になります。
6.バランスボールを使ったバックエクステンションのやり方
バックエクステンションを自体重で行う場合には、バランスボールを使って行うと効果的です。やり方は下記の通りです。
6-1.バランスボールを用意して上に上半身を乗せ背中を丸める
バランスボールを使ったバックエクステンションでは、上半身をバランスボールに乗せて膝をつきます。手はだらんと垂らし、バランスボールの端が骨盤に来るようにセットアップします。
6-2.手と足を上げて背中を反らす
セットアップが出来たら体が一直線になるように手と足を上げて背中を反らします。特に、足を上げる事を意識するとバランスボールを使った効果的なバックエクステンションを行うことが出来ます。
7.バランスボールを使ったバックエクステンションのポイント
バランスボールを使ったバックエクステンションは、前述した二つのやり方とポイントが異なります。
7-1.背中をしっかりと丸めて反らす
バランスボールを使ったバックエクステンションは、フリーウエイトでのやり方と同様に背中を丸めましょう。背中を丸める事によって、脊柱起立筋を効率的に収縮・伸展させることが出来るためです。
バランスボールに体をぴったりとフィットさせるようにすると、自然と体は丸まります。
7-2.背中を反らすよりも足を上げることを意識する
※Joseph and Carolyn3)より改変引用
バランスボールを使ったバックエクステンションでは、背中を反らすよりも足を上げる事を意識しましょう。なぜならば、自体重で行うバックエクステンションの場合には、体幹の動作よりも下半身の動作を行ったほうが筋活動は活発であるためです。
Joseph and Carolyn3)の研究結果によれば、足を固定して上半身を反らす動作と上半身を固定して足を上げる動作を比較した時に脊柱起立筋の筋活動は、上半身を固定した時のほうが大きかったことが報告されています。
つまり、自体重で行うバックエクステンションでは、足を上げる事を意識したほうが効果的であるということです。
8.まとめ
バックエクステンションは、脊柱起立筋を鍛えるのに効果的なトレーニングです。
脊柱起立筋は、鍛えると背筋が伸びて姿勢がよくなります。
この脊柱起立筋を鍛えるトレーニングとしては、デッドリフトやローイング種目などがありますが、腰への負担を軽減して鍛えたいのであればバックエクステンションがおすすめです。
バックエクステンションに取り組むのであれば、フリーウエイト、マシンやバランスボールを用いて行いましょう。やり方やポイントなどは様々あるため、本記事を参考に取り組んでみてください。
1)山川隆由,平田総一郎,水野耕作,棚瀬嘉宏(2000).体幹前屈運動における腰部脊柱起立筋の動作筋電図学的研究―腰痛発生との関連について― 神戸大学医学部紀要 61(1・2・3):49-54.
2)丸田和夫,江口淳子,渡邊進(2006).骨盤傾斜が座位における体幹前傾動作時の脊柱起立筋および腹直筋活動に及ぼす影響 川崎医療福祉学会誌 15(2)463-469.
3)Joseph Ng and Carolyn Richardson(1994)EMG study of erector spinae and multifidus in two isometric back extension exercises, Journal of Physiotherapy, 40(2)115-121.
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