最近、お尻を積極的に鍛えようとしている人が増えてきています。その証拠にスクワットやヒップスラストを行う人が珍しくなくなってきました。
スクワットやヒップスラストはわかりやすいけどヒップアブダクションだけなんとなくわかりづらいと感じる人は多いと思います。
この記事ではヒップアブダクションの基本情報、理想的な動作、刺激を与えることができる部位、ヒップアブダクションの効果について紹介・解説しています。ぜひ、参考にしてみてください。
1.ヒップアブダクションとは
ヒップアブダクションは脚を外側に振る動きを行うことでお尻に刺激を与える種目のことを言います。ヒップアブダクションの基本情報を解説します。
1ー1.お尻の筋肉を活性化させることができる種目
ヒップアブダクションはお尻の筋肉を活性化させることができる種目です。ヒップアブダクションは、お尻の筋肉の中でも骨盤を安定させるはたらきを持つ中殿筋を活性化させることができ、そのことがスクワットやデッドリフトといったフリーウエイト種目のフォームの改善につながります。
なので、ヒップアブダクションはフリーウエイト種目の前に行う準備運動として優秀な種目といえます。ヒップアブダクションは脚のトレーニング日の最初に行い、その後に行う種目の質を高めてくれる触媒として取り入れるのがおすすめです。
1ー2.筋肥大するほどの負荷をかけるのは難しい種目
ヒップアブダクションにはさまざまなバリエーションのものがありますが、どのバリエーションのヒップアブダクションでも筋肥大をもたらすほどの負荷をかけることはできません。なぜなら、ヒップアブダクションの構造上、負荷を大きくしすぎると胴体部の横曲がり(側屈)が起こり、お尻の力以外のところで重量を挙げてしまうようになるからです。
また、研究結果によると股関節の外転(脚を外側に振る動き)のみの動作よりも、股関節の伸展(脚を後ろに振る動き)と股関節の外転合わさった動作のほうが中殿筋への刺激が強いという結果が出ています。(池添ほか、1997)なので、ヒップアブダクションよりも高重量のローバースクワットのほうが筋肥大には適しています。
ヒップアブダクションで何セットも行って筋肥大を狙うよりもローバースクワットのセット数を増やしたほうが筋肥大を狙ううえで効率的です。
ヒップアブダクションは1セットだけ準備運動として行い、ローバースクワットで頑張るというようにしましょう。
1ー3.股関節の外転に特化した種目
ヒップアブダクションは股関節の外転動作に特化した種目です。股関節の外転とは脚を外側に振る動きのことです。ヒップアブダクションでは股関節の外転動作のみ行うので他のお尻を鍛える種目とは違った刺激をお尻に与えることができます。
2.ヒップアブダクションのバリエーション
ヒップアブダクションには大きく分けて3つのバリエーションがあります。それぞれの特徴を踏まえて解説します。
2ー1.簡単にできるマシンヒップアブダクション
ヒップアブダクションの中でもっともオーソドックスな種目がマシンヒップアブダクションです。マシンに腰掛けて脚を外側に振るだけなのでトレーニングに馴染みがない人でも簡単にできることが大きな特徴です。
2ー2.道具がなくてもできるライイングヒップアブダクション
ライイングヒップアブダクションは横向きに寝て脚を開くことでお尻に筋肉に刺激を与える種目です。ライイングヒップアブダクションは道具がなくてもできることが特徴です。リハビリの現場でよく採用されている種目でもあります。
また、ライイングヒップアブダクションは手軽にお尻の筋肉を活性化させることができるのでスクワットやデッドリフトを行う前の準備運動として扱われることがあります。スクワットやデッドリフトの動作を矯正する準備運動としては優秀な種目です。
2ー3.自由な軌道で行うことができるケーブルヒップアブダクション
ケーブルヒップアブダクションは自由な軌道で行うことができることが特徴です。股関節の柔軟性の問題で脚を外側に振ることができない人でも軌道の関係上負荷をかけ続けることができることがメリットです。ただ、ケーブルヒップアブダクションは正しい姿勢をとることが難しい種目なのでマスターするにはある程度の時間が必要です。
3.マシンヒップアブダクションの理想的な動作
ここからはヒップアブダクションの理想的な動作を行うためのポイントを解説していきます。まずはマシンでのヒップアブダクションのポイントを紹介します。
3ー1.セッティング時の2つのポイント
まずはマシンでのヒップアブダクションのセッティング時でのポイントを2つ紹介します。
膝と足首の角度を90度にする
マシンでのヒップアブダクションを行うときは膝の外側にパッドがくるようにしてから、膝と足首の角度は90度にしておきましょう。あらかじめ膝と足首の角度を設定しておくことで太ももやふくらはぎの疲労を軽減することができます。
骨盤を少しだけ前傾させる
ヒップアブダクションを行うときは常に骨盤を少しだけ前傾させるようにしましょう。骨盤を前傾させることでお尻の筋肉の収縮を強くすることができます。マシンでのヒップアブダクションを行うときは背もたれから腰を離して行うようにしましょう。
3ー2.スタートポジション時のポイント
続いてはスタートポジションでのポイントを紹介します。
息を吸い込んで胴体を固める
マシンでのヒップアブダクションで動作に入る直前に、息を吸い込んで胴体を固めましょう。座位だとどうしても骨盤が後傾してしまう人でも息を吸い込んで胴体を固めることで胴体部をニュートラルな状態にすることができます。お尻に負荷を集中させたいのであれば息を吸い込んでから動作に入るようにしましょう。
3ー3.フィニッシュポジション時の2つのポイント
フィニッシュポジションでのポイントを2つ紹介します。
胴体の位置をキープする
マシンでのヒップアブダクションでは常に胴体の位置をキープするようにしましょう。特にフィニッシュポジションでは胴体が後ろに流れやすいので注意が必要です。フィニッシュポジションでも胴体の位置をキープすることを心がけましょう。
3秒かけて戻す
ヒップアブダクションのフィニッシュポジションの後は3秒かけてスタートポジションに戻るようにしましょう。ヒップアブダクションはフィニッシュポジションで安心して戻す動作を雑にしてしまいがちな種目です。丁寧に3秒かけて戻して筋肉の緊張時間を長くしましょう。
4.ライイングヒップアブダクションの理想的な動作
準備運動として行われることがあるライイングヒップアブダクションのポイントを紹介します。
4ー1.セッティング時の3つのポイント
ライイングヒップアブダクションは床で行う種目なのでセッティングが大事です。セッティング時のポイントを3つ紹介します。
骨盤が真横を向くように横たわる
ライイングヒップアブダクションで最初に行うことは骨盤が真横を向くように横たわることです。もし、骨盤が真横に向いていないと捻れが生まれて安定したフォームを作ることができなくなります。スタートポジションでもフィニッシュポジションでも骨盤が真横を向くように心がけましょう。
床側の膝を90度に曲げる
安定したライイングヒップアブダクションを行うためには床側の膝を90度に曲げておきましょう。床側の膝を90度に曲げておくことで骨盤の動きを抑えることができます。床側の膝を90度に曲げて安定したライイングヒップアブダクションを行いましょう。
上側の手はへその前に置く
ライイングヒップアブダクションの下半身のセッティングが終わったら、上側の手をへその前に置くようにしましょう。上側の手をへその前に置くことで前後のバランスが取りやすくなります。また、上側の手で床を強く押すことで腹圧が高まり骨盤の動きを抑えることができます。
4ー2.スタートポジション時のポイント
次はライイングヒップアブダクションのスタートポジション時のポイントを紹介します。
膝と膝との距離は腰幅程度に広げる
ライイングヒップアブダクションのスタートポジションは上側の脚を挙げて膝と膝との距離が腰幅程度になるようにします。脚が浮いている状態をスタートポジションにすることにより、お尻の筋肉の緊張時間を増やすことができます。スタートポジション時は膝と膝との距離は腰幅程度に広げるようにしましょう。
4ー3.フィニッシュポジション時のポイント
ライイングヒップアブダクションのフィニッシュポジション時のポイントを紹介します。
脚を30度持ち上げる感覚で行う
ライイングヒップアブダクションのフィニッシュポジションは床と脚との角度が30度になるところに設定しましょう。それ以上脚を持ち上げてしまうと胴体部が横に曲がったり、骨盤が傾いたりしてしまいます。お尻に負荷を集中させたいのであれば脚を30度まで持ち上がる感覚で行うようにしましょう。
5.ケーブルヒップアブダクションの理想的な動作
ケーブルヒップアブダクションの理想的な動作のためのポイントを各ポジションごとに紹介します。
5ー1.セッティング時の2つのポイント
ケーブルヒップアブダクションは体勢をキープするのが難しい種目です。セッティングを丁寧に行うことで体勢をキープすることが容易になります。
ウエイトスタックから遠いほうの足首にアタッチメントを装着する
ヒップアブダクションは脚を外側に振ることでお尻の筋肉を活性化させる種目です。なので、アタッチメントはウエイトスタックから遠いほうの足首に装着します。アタッチメントを装着するときはウエイトスタックが浮いていないことを確認してから装着しましょう。
ハンドルの真下に軸足を置く
ヒップアブダクションのセッティングで大事なのはハンドルの真下に軸足を置くことです。ハンドルの真下に軸足がきていることでバランスが取りやすくなり外側の脚の動作に集中しやすくなります。動作中にブレを作りたくなければ、ハンドルの真下に軸足を置くようにしましょう。
5ー2.スタートポジション時の2つのポイント
ケーブルヒップアブダクションのスタートポジション時のポイントを2つ紹介します。
直立の状態を作る
ケーブルヒップアブダクションを行うときは直立の状態を作るようにしましょう。背中や腰が丸まっていてはお尻の筋肉を強く収縮させることができません。お尻の筋肉に強い刺激を与えたいのであれば直立の状態を作りましょう。
足首を90度に固定する
ケーブルヒップアブダクションを行うときは足首を90度に固定するようにしましょう。90度よりも角度が小さいと脛が疲れやすくなり効果が半減します。反対に90度よりも角度が大きいとアタッチメントが外れやすくなり危険です。足首をちょうどいい90度に固定して行うようにしましょう。
5ー3.フィニッシュポジション時のポイント
ケーブルで行うヒップアブダクションのフィニッシュポジション時のポイントを紹介します。
脚を持ち上げるのは身体と脚との角度が30度のところまでにする
ケーブルヒップアブダクションを行うとき、脚を持ち上げるのは身体と脚との角度が30度のところまでにしましょう。もし、それ以上脚を高く挙げようすると胴体部の側屈を招き、お尻への刺激が減ってしまいます。脚を持ち上げるのは身体と脚との角度が30度のところまでにしておきましょう。
6.ヒップアブダクションで刺激を与えることができる部位
ヒップアブダクションで刺激を与えることができる部位を解説します。
6ー1.お尻の上部にある中殿筋
ヒップアブダクションを行うことで中殿筋に刺激を与えることができます。中殿筋は骨盤(腸骨)から太ももの骨にまでついている筋肉です。中殿筋はお尻のやや上側にあり筋肉が肥大することで丸みを帯びたヒップを作ることができます。
中殿筋は脚を外側に振ったり後ろに振ったりすることで刺激が入ります。また、片足立ちになった時などに骨盤を安定させるはたらきも持っています。ケーブルでのヒップエクステンションは片足立ちのような状態で脚を外側に振るので中殿筋を活性化させるのにはもってこいの種目といえます。
6ー2.お尻全体の筋肉である大殿筋
ヒップアブダクションは中殿筋だけではなく大殿筋にも刺激を与えることができます。大殿筋は骨盤の中央(腸骨・仙骨)から太ももの骨までついているお尻の筋肉です。大殿筋の主なはたらきは脚を外側に振ること、内側に振ること、後ろに振ることです。
まとめ
ヒップアブダクションは準備運動としては優秀な種目ですが、筋肉を肥大させるまでの負荷を筋肉に与えることはできない種目です。ヒップアブダクションを準備運動として行い、ローバースクワットでお尻を鍛えるというほうが筋肥大には適しています。
ぜひ、ヒップアブダクションを準備運動として使ってみてください。応援しています。
参考)大殿筋・中殿筋に関する筋電図学的分析 池添冬芽ほか 1997
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