おさえておくべきヒップスラストの基本と効果的に行う3つのポイント

ヒップスラスト

フィットネスモデルだけでなく、ファッションモデルにも浸透しているヒップスラスト。今やSNSでスタイルのいい人がヒップスラストでものすごい重量を挙げてる様子がアップされています。その様子を見てやってみたいと思ってみても不思議ではありません。

ただ、ヒップスラストについて何をしたらいいかがわからない、そもそもどういう効果があるかがわからないといった疑問が浮かぶと思います。

この記事では、ヒップスラストとはどんな種目どのような効果があるのかといったことから、理想的なフォームの作り方効果的に行うコツについて紹介しています。
ぜひ、参考にしてみてください。

1.ヒップスラストとは

ヒップスラストは、ベンチに背中をつけて仰向けのようになり、腰に乗せたバーベルを持ち上げる種目です。お尻を上に持ち上げることでお尻に強い刺激が入り、集中的に鍛えることができます。

おもに、ヒップスラストはヒップラインのシルエットを良くしたい人が行うことが多く、女性のファッションモデルの人の中にはスタイルの維持のためにヒップスラストを取り入れている人もいます。

ヒップスラストはセッティングさえ間違えなければトレーニングの中でも比較的簡単な種目なので、最近では人気の種目になっています。

1-1.ヒップスラストと他種目との比較

ヒップスラストは他のトレーニング種目とどのように違うのかを知ることによって、ヒップスラストのことについて理解が深まります。

スクワットとはメインで使う関節が違う

スクワット

ヒップスラストとスクワットは、一般的にはヒップラインのシルエットを良くしたい人向けの種目として紹介されることが多い種目です。しかし、ヒップスラストとスクワットはメインで使う関節が違うので、鍛えることができる部位も大きく異なります。

ヒップスラスト股関節をメインで使うのに対し、スクワット膝関節をメインで使います。トレーニングはメインで使った関節の周りの筋肉が鍛えられるので、ヒップスラストではお尻(大臀筋)スクワットでは太ももの前側(大腿四頭筋)がメインで鍛えられる筋肉ということになります。

もし、スクワットでお尻を鍛えるのであれば、しゃがむ深さを深くしたり、足幅を広げたりといった工夫が必要になります。詳しくはスクワットのページを参考にしてみてください。ヒップスラストではこのような工夫が必要ないので、ヒップスラストはお尻を鍛えるのに適しているといえます。

デッドリフトとの違いはバランスのとりやすさと負荷のかかり方

デッドリフト

ヒップスラストとデッドリフトとの大きな違いはバランスのとりやすさです。デッドリフトは床に置いているバーベルを股関節を使って持ち上げる種目なので、ヒップスラストとメインで使う関節は同じです。

しかし、ヒップスラストとデッドリフトはバランスのとりやすさに大きな違いがあります。デッドリフトは両方の足の裏しかバランスを取るスペースはありませんが、ヒップスラストは両方の足の裏からベンチに接している背中までのスペースをバランスを取るために使うことができます。(支持基底面)

また、ヒップスラストとデッドリフトはお尻への負荷のかかり方が違います。ヒップスラストではお尻への負荷のかかり方は常に一定ですが、デッドリフトは重力の関係により身体の傾きでお尻への負荷は変わってしまいます。よって、ヒップスラストを行うときは重量よりも、筋肉を収縮させることにこだわりましょう。

1-3.ヒップスラストの種類

ヒップスラストにはベンチを使うものとそうでないものがあります。その2種目の特徴について解説します。

ヒップリフトはどこでもできる

ヒップリフトはどこでもできる

ヒップリフトは、仰向けで膝を曲げた状態からお尻を持ち上げてお尻を鍛える種目です。特徴はバーベルやベンチといった道具がいらないので、どこでも行うことができることです。ただ、ヒップリフトは負荷があまり大きくないので、物足りなくなったらヒップスラストへの移行をおすすめします。

ヒップリフトでバーベルを使わないようにしましょう。なぜなら、ヒップリフトの骨盤の軌道は垂直から大きく離れており、バーベルを使おうものなら頭部側にバーベルが転がる可能性があり大変危険だからです。もし、どうしてもヒップリフトで負荷を増やしたいのであれば、プレートのような転がる可能性の低いものを使いましょう。

ヒップスラストは負荷を調節できる

負荷を調整できる

ヒップスラストの特徴は、負荷を調節することができるところです。ヒップスラストは、ヒップリフトとは違い、骨盤の軌道が垂直よりなので、バーベルを使っても頭部側に転がる危険性は極めて低いので安全です。また、ヒップスラストは、ヒップリフトよりも骨盤の動く範囲がやや広くなるので、お尻の筋肉への刺激を強くすることができる点もメリットです。

2.ヒップスラストの理想的な動作

ヒップスラストの特徴を理解した上で、次はヒップスラストの理想的な動作を解説していきます。

2ー1.ヒップスラストのセッティング(開始時)での4つのポイント

ヒップスラストのセッティング

ヒップスラストを行う際、セッティングを適切に行うことで安定したフォームに近づきます。

ベンチと身体との角度を直角にする

角度は直角

ヒップスラストのセッティングをする際、最初にしてほしいことがベンチの長辺と身体との角度を直角にすることです。なぜなら、ベンチの短辺側を使うとテコの原理でベンチがひっくり返ってしまい大事故につながるからです。

また、ベンチに対して斜めに背中をつけてしまうとヒップスラストを上手く行うことができなくなります。当たり前のことと思わずに1回1回丁寧にセッティングをしましょう。

ベンチとの接点が肩甲骨よりも下に来るようにする

ヒップスラストのセッティングをするとき、ベンチとの接点が肩甲骨よりも腰側にするようにしましょう。なぜなら、ベンチとの接点を肩甲骨よりも下側にすることで身体が安定し、バーベルの操作がしやすくなるからです。理想のベンチとの接点は肩甲骨の真下の位置です。ここが一番安定します。

太ももに負荷が逃げないように脛が床と垂直になるようにする

ヒップスラストをするとき、常にひざが床と垂直になるような位置にかかとを置くと安定したヒップスラストができるようになります。反対にいうと、脛が床と垂直になるように踵を置かないと力のロスが生まれ効果的なヒップスラストができなくなります。

ベンチから足が遠すぎると力が入らないうえに負荷が太ももの裏に移ってしまいます。また、ベンチから足の位置が近すぎても、太ももの前に負荷が逃げてしまいます。

そうならないために、膝の真下にかかとを置いて踏ん張りやすい位置を見つけましょう脛が床と垂直の位置に来ることで力のロスが少なくなり、お尻に負荷が集中しやすくなります。

バーベルが骨盤のくぼみに来るようにする

バーベルの位置

安定したヒップスラストを行うために大事なことは、バーベルが骨盤のくぼみに来るようにすることです。骨盤のでっぱりの部分(上前腸骨棘)の上にバーを乗せてしまうとバーベルは転がってしまいますそうなると安定したヒップスラストはできなくなるので、骨盤のでっぱり部分のやや下にバーを乗せるようにしましょう。

骨盤のでっぱりの部分を親指で下になぞると固くない部分が出てくると思います。その固くない部分にバーベルを乗せると動作が安定します。

2ー2.ヒップスラストのスタートポジションでの3つのポイント

ヒップスラストのスタートポジション

ヒップスラストのスタートポジションはバーベルが床から浮いたところです。このポジションは負荷が一気にかかるので注意が必要です。

手を添えてバーベルが転がるのを防ぐ

バーが安定するところにあっても動作中に絶対に動かないという保証はありません。念のためにバーベルに手を添えてバーベルが転がるのを防ぎましょう

息を大きく吸い込む

ヒップスラストでバーベルを持ち上げる直前に息を大きく吸い込みましょうそうすることで骨盤の向きが理想的なポジションに収まるようになるからです。ヒップスラストは骨盤を上げていく途中で負荷がかかるので、反り過ぎや曲がり過ぎの状態で始めると怪我のリスクは跳ね上がります。怪我の予防という意味で息を大きく吸い込みましょう。

お尻に力を入れて床を足で押す

ヒップスラストでバーを床から持ち上げるときからお尻に力を入れておくことで、筋肉の緊張時間が長くなり刺激が強くなります。また、お尻に力を入れておくことで、バーベルの重さによる腰が反りすぎを防ぐことができます。

2‐3.ヒップスラストのフィニッシュポジションでの2つのポイント

ヒップスラストのフィニッシュポジション

ヒップスラストのフィニッシュポジションは足の裏が全部床に着いた状態で骨盤を持ち上げきったところです。そこでのポイントを解説します。

骨盤を持ち上げるイメージで行う

ヒップスラストのフィニッシュポジションで大事なことはお尻の筋肉を収縮させることです。骨盤を持ち上げるイメージで行うことでバーベルの位置を安定させつつお尻の筋肉を収縮させることができます。

お尻をできる限り固くする

ヒップスラストのフィニッシュポジションではお尻をできる限り固くしましょう。ヒップスラストの最大の特徴はお尻の筋肉が収縮したときにも大きな負荷がかかり続けることです。

2ー4.ヒップスラストのセッティング(終了時)での3つのポイント

ヒップスラストの終了時

ヒップスラストを終わらせるときにも気をつけておきたいポイントはあります。

バーベルをやさしく下ろす

ヒップスラストの終了時に、バーベルをやさしく下ろすことで安全に終わることができます。反対に素早く下ろしてしまうとバーベルがバウンドして予期せぬ怪我を生むかもしれません。怪我をしないようにバーベルをやさしく下ろしましょう

床にお尻を着ける

ヒップスラストを安全に終わるためには、床にお尻を着けて体勢を整えるようにしましょう。負荷がかかっている状態のまま終わろうとすると、足側にバーが転がり太ももや膝にすり傷をつくってしまう恐れがあります。すり傷は他のトレーニングにも悪影響が出てしまうことがあるので、できるだけ避けておいたほうがいいでしょう。

長座の状態になりバーベルを前方に転がす

最後に長座になりバーベルを前方に転がすといいでしょう。バーベルと身体を完全に離すことでより安全な体勢をとることができます。バーベルを中途半端に遠ざけて立ち上がろうとしてすねを強打した人を知っています。そうならないように足の先までバーベルを遠ざけましょう

3.ヒップスラストで鍛えられる部位

ヒップスラストはお尻を集中的に鍛える種目です。ここではヒップスラストで鍛えることができる部位を詳しく解説します。

3-1.ヒップスラストは大臀筋に強い刺激を与えることができる

大殿筋

ヒップスラストは大臀筋に集中的に刺激を与えることができる種目です。大臀筋は骨盤から太ももの骨にかけて股関節の後ろ側を全体的に覆っている大きな筋肉です。ヒップスラストを行うことで、骨盤から太ももの骨にかけて付いている大臀筋が強く収縮します。

大臀筋は股関節の伸展や外旋といった働きがあり、しゃがんだ状態・腰を引いた状態から直立をするときや、歩く・走るとき、つま先を外側に向けたりするときに使われます。大臀筋は普通に生活していれば使わない日がない筋肉です。大臀筋のような毎日使う筋肉を強化することで、他の筋肉の負担を軽減して関節や靭帯の損傷を減らすことにつながります。変形性膝関節症の人が大臀筋を鍛えることで痛みが改善されたというデータもあります。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2009/0/2009_0_C4P1153/_pdf/-char/ja

4.ヒップスラストで得ることができる効果

ヒップスラストが大臀筋を鍛えるということがわかったところで、ヒップスラストがもたらす効果のついて解説します。

4ー1.ヒップアップ効果

ヒップアップ効果

ヒップスラストを始める人の大半が、ヒップアップ効果を期待してのことだと思われます。解剖学上、大臀筋の筋肉のふくらみイコールお尻のふくらみなので、大臀筋を鍛えることができるヒップスラストを継続的に行うことでお尻のふくらみを強調することができます。それがヒップアップにつながります。

また、大臀筋が大きくなることでヒップとウエストの差が大きくなり、くびれを強調することができます。

4ー2.普段の生活で疲れにくくなる

疲れにくい体に

ヒップスラストで鍛えることができる大臀筋は普段の生活でたくさん使われています。立つ、歩く、走る、階段を昇るといった動作は大臀筋が関わっています。大臀筋の筋力が増すことで、これらの動作が楽になります。

実際、人工股関節置換手術のリハビリテーションとして腰上げ運動(ヒップリフト)が使われており、歩く動作が改善したという研究結果があります。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2012/0/2012_48101386/_pdf/-char/ja

4ー3.力が強くなる

力が強くなる

ヒップスラストを継続的に行うことで、下半身の力が強くなります。ニュージーランドの14~17歳のアスリートを対象とした実験でヒップスラストのみを週2回で6週間行った結果、スクワットの筋力のマックス数値も上昇していたという実験結果が出ています。(https://pdfs.semanticscholar.org/9f3e/ced0913cae25f8aab383f82fa1beba4f8d41.pdf?_ga=2.25036915.812868464.1527487894-1131458241.1527487894

個人的な感覚だと、ヒップスラストを導入してからスクワットでの低いポジションからの切り返すところやデッドリフトの引き始めるところが楽になりました。それ以来、私はヒップスラストをスクワットやデッドリフトの補強として取り入れています。

5.ヒップスラストをより効果的に行うための3つのポイント

ヒップスラストをより効果的に行うためのポイントについて解説します。

5-1.大きめのプレートを使う

大きなプレートを使う

ヒップスラストのセッティングをスムーズしたいのであれば、大きめのプレートを使うといいでしょう。大きめのプレートを使うことで、バーの下に身体を入れることができるからです。そうすると、スムーズにセッティングすることができるようになり、効果的なトレーニングにつながります。

直径が大きくて軽いプレート(バンパープレート)があれば理想ですが、無ければプレートの設置するところを別のプレートなどで高くして行うといいでしょう。

ヒップスラストは高重量がどなたでも扱うことができる種目なので、すぐにもっとも直径が大きい20kgプレートを使うことができるようになります。20kgプレートだと大抵の人はバーの下に身体を入れることができるのですぐに別のプレートを用意することもなくなります。

5-2.つま先を外側に開く

つま先の方向

ヒップスラストを行うとき、つま先は正面に向けて行うのが一般的ですが、つま先をやや外側に開いて行うほうがお尻の刺激が入りやすいことがあります。自分に合った足幅・つま先の向きを見つけるとより効果的なヒップスラストができるようになります。

5-3.使用重量を上げすぎない

重すぎる重量はNG

ヒップスラストを効果的に行うには使用重量を上げ過ぎないことがポイントです。ヒップスラストはどなたでも高重量が扱えます。ただ、ヒップスラストで高重量のバーベルをただ動かしているだけになってしまっていると目的を果たすことができません。しっかりとヒップスラストのフィニッシュポジションをとることができる重量設定を見つけましょう。

まとめ

ヒップスラストは大臀筋を集中的に鍛えることができる種目です。大臀筋を鍛えることでヒップアップ効果や日常生活の負担の軽減、筋力の向上が期待できます。

ヒップスラストは最初のセッティングを丁寧に行うことと、フィニッシュポジションをしっかりとることさえしていれば、大きな間違いが起こらない種目です。1セット10回を目安に行ってみてください。

もし、他のトレーニング種目との組み合わせを考えているのであれば、ヒップスラストはスクワットやデッドリフトの後をおすすめします。それ以外の種目であれば、ヒップスラストは先に行いましょう。

個人的な感想ですが、ヒップスラストは厚手のロングスパッツを履いて行うと集中しやすい気がします。骨盤の摩擦や恥ずかしさの軽減が期待できます。

ぜひ、試してみてください。応援しています。

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編集長プロフィール

Bulkup theory編集長

Bulkup theory編集長

私は現在、IT企業で働きながら競技者としても活動していますが、本業が忙しい中で競技者として活動するためには「効果的で効率的な筋トレ」が非常に重要になってきます。このメディアでは現役の選手やパーソナルトレーナーと共に「最小限の努力で最大の成果」をモットーに高い成果を実現するための筋トレ情報を可能な限り科学的根拠を持って発信していきます。